仮登記担保権者は、目的不動産につき後順位権利者があるときは、債務者に対する被担保債権以外の金銭債権をもつて自己の負担する清算金支払債務と相殺することができない。
仮登記担保の目的不動産につき後順位権利者がある場合と被担保債権以外の債権を自働債権とする清算金支払債務との相殺の許否
民法369条,民法482条,民法505条,民法556条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項,不動産登記法105条,不動産登記法146条
判旨
仮登記担保権者は、債務者に対して負担する清算金支払債務と、被担保債権以外の別個の金銭債権とを相殺することはできない。なぜなら、これを認めると、本来優先権のない債権について後順位担保権者等に優先して弁済を受けるのと同様の結果となり、他債権者の利益を不当に侵害するからである。
問題の所在(論点)
仮登記担保権者は、被担保債権以外の別個の債権を自働債権とし、債務者に対して負担する清算金支払債務を受働債権として相殺することができるか。後順位担保権者が存在する場合における清算金の法的性質が問題となる。
規範
1. 仮登記担保権者が不動産を換価処分した際、評価額が被担保債権額を超える場合に生じる清算金は、後順位担保権者や差押債権者がその優先順位に従って債権の満足を受けるべき対象となる。 2. したがって、仮登記担保権者は、債務者に対して被担保債権以外の別個の金銭債権を有する場合であっても、当該債権をもって清算金支払債務と相殺することは許されない。ただし、当事者が別段の意思を表示し、かつ諸般の事情に照らして合理的と認められる特別の場合を除く。
重要事実
1. EはFから125万円を借り入れ、その担保として本件建物に売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。 2. その後、Eは被上告人(後順位者)のために根抵当権を設定し登記した。 3. 上告人は、FのEに対する債権のうち40万円を代位弁済し、Fから売買予約上の権利を譲り受けて付記登記を経由した後、Eに対し予約完結の意思表示をした。 4. 上告人はEに対し、上記40万円のほか、別個の求償金債権等(計300万円以上)を有していたため、清算金支払債務とこれら別個の債権との相殺を主張した。
事件番号: 昭和35(オ)94 / 裁判年月日: 昭和37年3月13日 / 結論: 棄却
金銭消費貸借に基づく債権担保の目的のために、債務者所有の建物につき、売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後に金銭が授受されたとしても右仮登記は有効である。
あてはめ
1. 清算金は、不動産の有する価値のうち仮登記担保権者に先取された残余価値が具現化したものであり、後順位担保権者らが優先順位に従い満足を受けるべき対象である。 2. 本件において、上告人が承継した仮登記担保権の被担保債権は40万円及び遅延損害金の範囲に限られる。 3. 上告人が主張するその他の求償金債権等は本件仮登記担保権の被担保債権には属さない。これらによる相殺を認めると、後順位者である被上告人に優先して弁済を受けるのと同様の結果を招き、被上告人の利益を不当に侵害する。したがって、相殺は許されない。
結論
仮登記担保権者は、被担保債権以外の債権をもって清算金支払債務と相殺し、後順位担保権者に対抗することはできない。
実務上の射程
仮登記担保契約に関する法律(仮担法)制定前の判例であるが、清算金の性質を「後順位者のための責任財産」と捉える法理は、現行の仮担法下における清算金の分配順位(仮担法13条等)の解釈としても重要である。答案上は、清算金からの優先弁済の範囲を画定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)255 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約が成立するためには、代物弁済によつて消滅すべき債権の数額が当初より一定していることを要しないが、少くとも一定しうべき基礎が定められていることを要する。
事件番号: 昭和63(オ)357 / 裁判年月日: 平成2年6月5日 / 結論: 破棄自判
売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の経由された不動産につき抵当権の設定を受け、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和44(オ)486 / 裁判年月日: 昭和47年7月6日 / 結論: その他
登記簿上後順位の抵当権者またはいわゆる仮登記担保権者であつた者でも、先順位の仮登記担保権者から不動産登記法一〇五条に基づく本登記手続承諾請求を受けた当時、すでに他にその登記につき附記登記による権利移転の登記を経由した者は、特段の事情のない限り、登記原因たる実体上の権利に基づき、仮登記担保権者に対して清算金を受けるべき地…