確定判決に基づいて強制執行がされた場合においても、右判決の成立過程において、原告が被告の権利を害する意図のもとに、作為または不作為によつて被告の訴訟手続に対する関与を妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺圏する等の不正な行為を行ない、その結果、本来ありうべからざる内容の確定判決を取得してこれを執行し、被告に損害を与えたものであるときは、原告の行為は不法行為を構成するものであつて、被告は、右確定判決に対して再審の訴を提起するまでもなく、原告に対し、右損害の賠償を請求することを妨げない。
確定判決に基づく強制執行と不法行為の成否
民法709条
判旨
判決の成立過程において、当事者が相手方の訴訟関与を妨げたり、虚偽の事実で裁判所を欺罔する等の不正な行為により、本来あり得ない内容の確定判決を取得し、かつこれを執行した場合には、既判力にかかわらず不法行為が成立し得る。
問題の所在(論点)
確定判決の内容が事実と異なり、その取得過程に不正がある場合、既判力の抵触を越えて不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が可能か。
規範
確定判決の既判力により請求権の存在や執行力が生ずるとしても、判決の成立過程において、当事者が(1)相手方の権利を害する意図のもとに、作為または不作為によって相手方の訴訟手続への関与を妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い、(2)その結果、本来ありうべからざる内容の確定判決を取得し、かつこれを執行した場合には、独立の訴えによって不法行為による損害賠償を請求することを妨げられない。これは再審事由を構成する場合であっても同様である。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者(上告人)との間で貸金等請求事件について裁判外の和解を成立させ、債務の弁済を受けた。債権者は訴えを取り下げる約旨に反し、訴訟代理人に和解の事実を告げず、和解を信じて欠席した債務者に対し不出頭のまま勝訴判決を取得した。債権者はこの確定判決に基づき、既に消滅したはずの債権について強制執行を行い、債務者に二重の支払を余儀なくさせた。
事件番号: 昭和39(オ)76 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 棄却
一 復代理人を選任しえない場合に、原審が復代理人が適法に選任されたと判断したことは違法であるが、原判示事実関係(原判決理由参照)に照らせば、代理人が復代理人としてではなく自己の代理人を選任したものと解する余地があり、右代理人の代理人について代理人のため、また、代理人について本人のため、順次民法第一一〇条の表見代理が成立…
あてはめ
被上告人は、和解により訴訟を続行する必要がないと信じた上告人の不作為を奇貨として、訴訟代理人に手続を続行させ確定判決を取得した。この判決は、和解によって消滅した請求権を認容する「本来ありうべからざる内容」のものである。このような判決に基づいて強制執行に及ぶことは、正義に反する不正な行為といえる。したがって、被上告人が和解の事実を隠して判決を得て執行した行為は、既判力の枠内にとどまるものではなく、上告人に対する不法行為を構成する疑いがある。
結論
確定判決の取得・執行が正義に反する不正な行為にあたる場合は、既判力があっても不法行為に基づき損害賠償を請求できる。原審は既判力のみを理由に請求を排斥しており、審理不尽・理由不備があるため破棄・差し戻すべきである。
実務上の射程
既判力の「制度的限界」あるいは「信義則による制限」の問題として位置づけられる。確定判決を実質的な既判力で争うのではなく、その取得・執行プロセスに着目して「不法行為」の形式で救済を認めた点に実務上の意義がある。答案では、既判力の遮断効の原則を述べた上で、相手方の訴訟関与の妨害や裁判所の欺罔といった顕著な正義反・濫用がある場合の例外として引用する。
事件番号: 昭和39(オ)1176 / 裁判年月日: 昭和40年7月8日 / 結論: 破棄差戻
私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出されたものであるときは、反証のないかぎり、該印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定するのを相当とするから、民訴法第三二六条により、該文書が真正に成立したものと推定すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)709 / 裁判年月日: 昭和43年4月19日 / 結論: 棄却
甲が乙丙丁の甲に対する昭和三八年五月六日付一一〇万円(ただし、乙丙は各四〇万円、丁は三〇万円)、弁済期同三九年五月五日、利息日歩二銭八厘毎月末日払とする消費貸借債権の存在しないことを主張し、右債権の不存在確認、右債権を被担保債権とする抵当権の設定登記の抹消登記手続などを求め、乙らが右債権は存在する旨主張したのに対し、裁…
事件番号: 昭和40(オ)362 / 裁判年月日: 昭和40年12月17日 / 結論: 棄却
賭博行為によつて生じた金銭債権のためにされた抵当権設定登記の抹消を請求するについては、民法第七〇八条は適用されないものと解するのが相当である。