抵当権の実行による競売手続の進行中に、申立人たる抵当権者が被担保債権および抵当権を他に譲渡した場合でも、旧抵当権者を申立人とする右競売手続によつて、競落人は、競落物件の所有権を取得する。
競売手続の進行中に被担保債権および抵当権が他に譲渡された場合と競落人の所有権取得
競売法2条
判旨
抵当権者が抵当権実行による競売手続の進行中に、被担保債権および抵当権を第三者に譲渡した場合であっても、競落許可決定が確定して代金が支払われたときは、競落人の所有権取得に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
抵当権の実行による競売手続の進行中に、被担保債権および抵当権が第三者に譲渡された場合、その後に確定した競落許可決定に基づく競落人の所有権取得の効力は認められるか。
規範
抵当権者が競売手続の進行中に債権および抵当権を譲渡したとしても、それ自体によって債権または抵当権が消滅するわけではない。したがって、競売手続が続行され、競落許可決定が確定して代金が支払われるという一連の法的効果が完結した場合には、当該譲渡の事実は競落人が有効に所有権を取得することを妨げる理由にはならない。
重要事実
抵当権者がその抵当権の実行として競売の申立てを行った。当該競売手続の進行中に、抵当権者は基本となる債権および抵当権を他者に譲渡した。その後、当該事件において競落許可決定が確定し、競落代金が支払われ、競落人のための所有権移転登記が経由された。
事件番号: 昭和43(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和44年4月18日 / 結論: 棄却
一、土地の抵当権設定後その実行前に地上建物が移転された場合でも、その移転が同一土地内であつて抵当権設定当時に存在した建物の利用に必要であつたものと認められる範囲にとどまつている場合には、土地の競売により右範囲において法定地上権が成立することを妨げない。 二、土地の競売により発生した法定地上権を地上建物とともに譲り受け、…
あてはめ
本件において、競売手続の基礎となる債権および抵当権が譲渡された事実は認められる。しかし、これらの権利は譲渡によって主体が変更されるのみで、権利自体が消滅したものではないといえる。既に競落許可決定が確定し、代金の支払および所有権移転登記まで完了している以上、手続の安定性を重視すべきである。したがって、譲渡があったとしても競落人の所有権取得に影響はないと解される。
結論
競落人の所有権取得は有効である。抵当権等の譲渡は競落人の所有権取得に影響を及ぼさない。
実務上の射程
抵当権実行手続の安定性を認めた判例である。競売手続開始後の被担保債権の譲渡は、民事執行法上の執行抗告や執行異議、請求異議の事由にはなり得るが、それらの救済手段が講じられず競落代金が納付された後においては、競落人の権利取得を争う理由にはならないことを示唆する。
事件番号: 昭和43(オ)846 / 裁判年月日: 昭和44年2月14日 / 結論: 棄却
抵当権設定当時土地および建物の所有者が異なる場合においては、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落の際、右土地およぴ建物が同一人の所有に帰していても、民法三八八条の規定は適用または準用されない。
事件番号: 昭和34(オ)444 / 裁判年月日: 昭和36年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の競売において、他人の依頼を受けて名義人となり競落した場合であっても、内部関係において所有権を依頼者に移転する合意があれば、依頼者が実質的な所有権を取得する。その後、当該物件の譲受人が従前の賃貸借契約を承継することに合意した場合には、譲受人は賃借人に対して明渡請求をなし得ない。 第1 事案の…
事件番号: 昭和27(オ)1293 / 裁判年月日: 昭和29年10月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者は、特別都市計画による換地予定地の指定がなされたとしても直ちに土地の所有権を失うものではなく、依然として当該土地の不法占拠者に対して明渡しを請求することができる。 第1 事案の概要:土地所有者である原告が、被告による土地の不法占拠に対し、所有権に基づき当該土地の明渡しを求めた。これに対し…