自動車損害賠償保障法三条但書所定の免責要件事実のうちある要件事実の存否が事故発生と関係がない場合には、免責を受けようとする自動車の運行供用者は、右要件事実が当該事故と関係がない旨を主張・立証すれば足りる。
自動車損害賠償保障法三条但書による免責と主張・立証すべき事項
自動車損害賠償保障法3条
判旨
自動車損害賠償保障法3条但書所定の免責要件について、事故発生と無関係な要件がある場合には、運行供用者は当該要件の存否が事故と無関係である旨を主張・立証すれば足りる。また、横断歩道のない場所で停車車両の間から幼児が飛び出した事故につき、運転者に予見可能性及び過失はないと判断した。
問題の所在(論点)
1. 自賠法3条但書所定の免責要件について、運行供用者は三つの要件すべてを厳格に主張・立証しなければならないか。 2. 停車車両の間から幼児が飛び出した本件事案において、運転者に過失が認められるか。
規範
1. 自賠法3条但書各号の免責要件のうち、ある要件事実の存否が当該事故発生と関係がない場合には、運行供用者は当該事実のすべてを個別に主張・立証する必要はなく、右要件事実の存否が当該事故と関係ない旨を主張・立証すれば足りる。 2. 運転者の過失(同条但書1号)の有無は、道路状況や交通実態に照らし、自車の進路直前に突如飛び出してくる者を予見し、これに対処すべき義務を課すことが過酷といえるか否かという観点から判断される。
重要事実
被告Bが時速約25キロメートルで自動車を運転中、信号待ちで停車していた対向車列の間から、5歳10か月の幼児A1が突然飛び出した。現場は横断歩道のない三差路付近で、Bからは停車車両の影に隠れたA1の存在を認識することが困難であった。BはA1の飛び出しに気づき直ちにブレーキをかけたが間に合わず接触した。B側は、事故がA1の飛び出しと監護者A2の過失により生じた旨主張したが、自賠法3条但書の他の免責要件(構造上の欠陥等)については明示的に主張していなかった。
あてはめ
1. 事故の態様から、車両の構造上の欠陥や機能障害が事故に関係しないことが明らかな場合、それらを個別に否定する主張がなくとも、事故原因が被害者側の過失にあるとの主張に「免責要件は事故と無関係」との主張が暗黙に含まれると解される。 2. Bは時速25キロメートルという低速で進行しており、横断歩道のない場所で停車車両の影から幼児が突如「自ら飛びかかってきたような状態」で現れることまで予見すべき義務はない。急停車しても接触を避けられないタイミングでの飛び出しであり、Bの運転に非難すべき点はなく、過失は否定される。
結論
Bには過失がなく、また自賠法3条但書の免責要件について必要な主張・立証があったと認められるため、被上告人(B側)は損害賠償責任を負わない。
実務上の射程
自賠法3条但書の「厳格な無過失責任に近い責任」を緩和し、主張立証の合理化を認めた点に意義がある。答案上、特に「飛び出し」事案での運転者の過失否定(信頼の原則に近い構成)や、弁論主義の観点から暗黙の主張を認める際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和33(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和35年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法722条2項の過失相殺における監護者の過失の有無は、加害者と被害者の公平な損失分担という制度趣旨に照らし、事故現場の状況や監護の態様を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:加害者は、軽自動二輪車を時速20kmで進行中、幼児である被害者を視認した。被害者が進路上に走り出るのを発見したが、…