一、特許発明または実用新案の技術的範囲についての判定は、特許庁のたんなる意見の表明であつて、鑑定的性質を有するにとどまる。 二、右判定は行政不服審査の対象となりえない。
一、特許発明または実用新案の技術的範囲についての判定の性質 二、右判定は行政不服審査の対象となるか
(1・2項につき),特許法71条,実用新案法26条,(2項につき),行政不服審査法2条1項,行政不服審査法4条1項
判旨
特許法71条に基づく技術的範囲の判定は、特許庁の単なる意見表明にすぎず、国民の権利義務に直接関係する法的効果を有しないため、行政不服審査法上の不服申立ての対象となる「処分」または「公権力の行使に当たる行為」には当たらない。
問題の所在(論点)
特許法71条(実用新案法26条により準用)に基づく「判定」が、行政不服審査法上の「処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当し、不服申立ての対象となるか。
規範
行政不服審査の対象となる「処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、国民の権利義務に直接関係し、その法律上の利益に影響を与える法的効果を有する行為を指す。また、同法2条1項の「事実行為」とは、処分に類似する法的効果を招来する権力的な事実上の行為を指す。したがって、性質上これらの法的効果を有しない行為は、不服申立ての対象となり得ない。
重要事実
実用新案権の技術的範囲について、特許庁による判定が行われた。上告人は、この判定に不服があるとして、実用新案法26条・特許法71条に基づく判定が行政不服審査法2条1項、4条1項の対象となり得ることを主張し、行政不服審査を求めた。原審が判定は不服審査の対象外であると判断したため、上告人はこれを法令違背・憲法違反であるとして上告した。
事件番号: 昭和40(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和43年4月12日 / 結論: 棄却
実用新案における構造の類否の判断にあたつて必然的にその構造を結果した目的および作用効果をも考慮することを許されないものではない。
あてはめ
まず、判定は技術的範囲を明確にする確認的行為であり、新たに権利を設定・変更するものではない。また、法は判定に法的効果を与える規定を置いていない。さらに、判定結果が侵害訴訟等で尊重されることがあっても、既判力を及ぼすものではなく、証拠資料となり得るに過ぎない。不利益を被る者は反証を挙げて争うことができ、裁判所もこれに拘束されない。したがって、判定は「特許庁の単なる意見の表明」であって、鑑定的性質を有するにとどまる。ゆえに、国民の権利義務に直接関係する法的効果を招来するものではなく、処分にも権力的事実行為にも該当しない。
結論
特許法所定の判定は、行政不服審査の対象としての行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に該当せず、これに対する不服申立ては認められない。
実務上の射程
行政事件訴訟法上の「処分性」の定義とも重なる判断枠組みである。特定の公的な鑑定・意見表明が、その後に続く訴訟等で事実上尊重されるに過ぎない(法的拘束力がない)場合、抗告訴訟や不服申立ての対象とはならないことを示す際の実務上の指針となる。
事件番号: 昭和40(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和43年6月20日 / 結論: 棄却
旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)に基づく実用新案の類否の判定にあたつては、たんに外形的な型の異同のみではなく、その構造を結果した目的、作用効果をも考慮すべきである。
事件番号: 昭和39(行ツ)62 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 破棄差戻
特許庁が、実用新案登録無効審判において提出された公知刊行物の記載によつては旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)第一条の考案を構成しないものとすることはできないと判断して、請求が成り立たない旨の審決をした場合であつても、右審決の取消訴訟において、当事者は、審決の判断を受けていない新たな公知刊行物に基づいて当該実用新案を…
事件番号: 昭和43(行ツ)99 / 裁判年月日: 昭和45年10月30日 / 結論: 棄却
旧特許法施行規則(大正一〇年農商務省令第三三号)四一条は、旧特許法(同年法律第九六号)六条に違反しない。