有限会社社員の提起した会社解散の訴、社員総会決議取消の訴および同無効確認の訴の係属中右社員が死亡した場合には、相続により持分を取得した相続人がその訴訟の原告たる地位を承継する。
有限会社社員の提起した会社解散の訴、社員総会決議取消の訴および同無効確認の訴と右社員の死亡による訴訟承継の成否
民訴法208条,有限会社法71条ノ2,有限会社法41条,商法247条,商法252条
判旨
有限会社の社員が有する共益権(解散請求権、決議取消請求権等)は、社員自身の経済的利益のために与えられた権利であり、社員の一身に専属するものではない。したがって、これらの権利および提起中の訴訟における原告の地位は、相続により承継される。
問題の所在(論点)
有限会社の社員が有する会社解散請求権、決議取消請求権、決議無効確認請求権等の共益権は、社員の一身に専属する権利か。また、これらを目的とする訴訟の係属中に原告たる社員が死亡した場合、相続人がその訴訟上の地位を承継できるか。
規範
社員の権利は、自益権・共益権を問わず、直接間接に社員自身の経済的利益のために行使されるべきものである。共益権も自益権の価値実現を保障するために認められたものであり、社員の地位(持分)に包含される。したがって、持分の移転が認められる以上、共益権も一身専属的な権利ではなく、譲渡性および相続性を有する。相続の場合、相続人は被相続人の法律上の地位を包括的に承継するため、持分に伴う諸権利のみならず、提起済みの訴訟における原告たる地位も承継する。
重要事実
有限会社の社員Dが、会社解散請求および社員総会決議の取消・無効確認を求めて出訴した。しかし、第一審の係属中にDが死亡した。Dの相続人である上告人は、遺産分割協議によりDの出資持分を全て取得したため、本件訴訟の原告たる地位を承継したと主張したが、原審は、当該権利は会社の利益擁護のための共益権であり、社員の一身に専属する権利であるとして、Dの死亡により訴訟は当然に終了したと判断した。
あてはめ
共益権が社員自身の経済的利益に帰すべきものである以上、これを一身専属的権利として相続の対象外とする理由はない。本件におけるDの持分は上告人に承継されており、それに伴い共益権も移転している。また、決議取消の訴えのように出訴期間の定めがある場合、相続人による承継を認めなければ、死亡という偶然の事情により是正の機会が失われる不合理が生じる。よって、包括承継人である上告人は、Dの有した実体法上の権利とともに、訴訟上の原告の地位をも当然に承継するといえる。
結論
共益権は一身専属的な権利ではないため、相続により承継される。したがって、原告の死亡によって訴訟が終了したとする原判決は民事訴訟法の解釈を誤ったものであり、相続人による訴訟承継が認められる。
実務上の射程
会社法上の各種訴訟(決議取消、代表訴訟等)における原告適格の承継を論じる際の基礎となる。特に「共益権も自益権(財産的利益)の価値実現に資するものである」というロジックは、株主の権利の譲渡性・相続性を論証する上で汎用性が高い。ただし、持分譲渡(特定承継)の場合には、権利自体は移転しても、当然には訴訟上の地位は承継されない点に留意が必要である。
事件番号: 昭和42(オ)567 / 裁判年月日: 昭和44年10月21日 / 結論: 棄却
民法上の組合契約ないしそれに類似する無名契約にもとづく共同事業において、契約当事者間に、同人らが死亡したときはその相続人が当然に共同事業に関する被相続人の地位を相続する旨の合意が成立していたときでも、右契約をもつて委任された業務執行者の地位は相続の対象となるものではない。
事件番号: 昭和44(オ)1112 / 裁判年月日: 昭和45年4月2日 / 結論: 棄却
一、役員選任の株主総会決議取消の訴の係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任されたときは、特別の事情のないかぎり、右決議取消の訴は、訴の利益を欠くに至るものと解すべきである。 二、前項の場合であつても、右株主総会決議取消の訴が当…
事件番号: 昭和63(オ)1134 / 裁判年月日: 平成4年1月24日 / 結論: 棄却
合名会社の解散後に死亡した社員の共同相続人の全員が社員である場合においても、遺産の分割がされ、死亡した社員の持分の共有関係が解消されるまでの間に、相続人が清算に関して右持分に基づく権利を行使するには、商法一四四条の規定に従い、そのうち一人を権利行使者と定めることを要する。