一、上級裁判所の裁判所書記官は、同裁判所において訴訟が完結し、その訴訟記録を他の裁判所に送付する手続を完了した時に、執行文付与の権限を失う。 二、執行文付与拒絶処分に対する異議申立は、その拒絶処分をした裁判所の裁判所書記官が執行文付与の権限を失つた後においては、申立の利益を欠き、不適法として却下を免れない。
一、上級裁判所の裁判所書記官が執行文付与の権限を失う時期 二、裁判所書記官の執行文付与権限の喪失と執行文付与拒絶処分に対する異議申立の適否
民訴法516条2項,民訴法396条,民訴法392条,民訴法206条
判旨
上級裁判所に訴訟が係属している場合でも、訴訟記録を他の裁判所に送付する手続を完了した後は、当該上級裁判所の裁判所書記官は執行文付与の権限を失う。権限喪失後に申し立てられた執行文付与拒絶処分に対する異議は、不適法として却下される。
問題の所在(論点)
上級裁判所が訴訟記録を他裁判所へ送付した後に、当該上級裁判所の裁判所書記官に執行文付与の権限が認められるか。また、権限喪失後になされた執行文付与拒絶処分に対する異議申立てに利益が認められるか。
規範
「訴訟が上級裁判所に係属するとき」(民事執行法26条1項、旧民訴法516条2項)とは、上級裁判所において訴訟が完結し、訴訟記録を他の裁判所に送付する手続を完了した時までを指す。裁判所書記官は訴訟記録に基づいて付与の適否を判断するため、記録送付後は権限を失うと解すべきである。また、権限喪失後に拒絶処分に対する異議(旧民訴法206条、民事執行法32条)を申し立てることは、もはや執行文付与を受ける余地がなく、申立ての利益を欠くため不適法である。
重要事実
申立人は最高裁判所において上告棄却判決を受けた後、最高裁判所の裁判所書記官に対し承継執行文の付与を申請したが、拒絶処分を受けた。その後、最高裁判所の裁判所書記官は第一審裁判所へ訴訟記録を送付する手続を完了した。申立人は、この記録送付が完了した後に、最高裁判所に対し、先の拒絶処分を不服として執行文付与拒絶処分に対する異議を申し立てた。
事件番号: 昭和24(ク)11 / 裁判年月日: 昭和24年3月24日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に定めた場合、すなわち原決定における憲法判断の不当を理由とする場合に限り許容される。 第1 事案の概要:抗告人は、最高裁判所に対して本件抗告を申し立てた。しかし、提出された抗告申立書及び抗告理由書の内容を検討したところ、原決定に憲法判断の不当があることを理由とす…
あてはめ
本件では、最高裁判所が訴訟記録を第一審である東京地方裁判所の裁判所書記官へ送付する手続を完了した時点で、最高裁判所の裁判所書記官は執行文付与の権限を喪失している。申立人が異議を申し立てたのは記録送付完了後であるため、仮に拒絶処分が不当であったとしても、もはや最高裁判所の書記官から執行文付与を受けることはできない。また、この拒絶処分は、改めて権限を有する第一審の書記官に付与申請をすることを妨げるものではない。したがって、異議を申し立てる利益はないといえる。
結論
本件異議申立ては不適法であり、却下される。
実務上の射程
執行文付与の権限を有する書記官(執行法26条1項)が、記録の有無という客観的事実に基づき決定されることを示した。民事執行法32条に基づく異議の適法性において、異議審の裁判時までに書記官が権限を失っている場合には申立ての利益が失われるという理屈は、裁判所間の記録移動が伴う場面で一般的に適用できる。
事件番号: 昭和50(オ)899 / 裁判年月日: 昭和51年3月4日 / 結論: 棄却
高等裁判所がした決定は、その告知によつて即時に確定する。
事件番号: 昭和55(オ)51 / 裁判年月日: 昭和55年5月1日 / 結論: 棄却
執行文付与に対する異議の訴においてその請求の原因として請求に関する異議の事由を主張することは許されない。
事件番号: 昭和26(ク)8 / 裁判年月日: 昭和26年5月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、原決定の憲法適合性に関する判断の不当を理由とする場合に限られ、それ以外の理由による抗告は不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人等が、下級裁判所の決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた事案。本件の抗告理由には、原決定において法律、命…
事件番号: 昭和26(ク)52 / 裁判年月日: 昭和26年5月24日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法上の特別抗告(旧法419条の2)に限られ、憲法違反の判断の不当を理由とする場合に限定される。憲法違反に名を借りた実質的な法律違反の主張は、最高裁判所に対する適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人が、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告人…