自作農創設特別措置法第四一条第一項第一号により売り渡された未墾地について、農地法第七三条、同法施行法第一二条所定の期間内に農地法第七二条に基づく買収処分がされた場合においては、その買収期日が右期間経過後の日に指定されていたとしても、右買収処分前に農林大臣の許可なくしてされた右未墾地の贈与契約は、右買収処分の時にその効力が生じないことが確定したものというべきである。
法定の期間内に農地法第七二条に基づいてされた未墾地買収処分の買収期日が右期間経過後の日に指定されていた場合と右買収処分前にされた未墾地の贈与の効力
自作農創設特別措置法41条1項1号,農地法61条,農地法72条,農地法73条,農地法施行法12条
判旨
農地法72条1項但書による未墾地の買戻し期間の終期は、買収令書の交付または公示の日であり、買収の効果が発生した時期ではない。また、許可を要する農地等の譲渡契約は、その許可が得られる前に国による買収処分がなされた場合、条件成就が不可能となり無効が確定する。
問題の所在(論点)
1.農地法72条1項但書に規定される買戻し(再買収)期間の終期をいつと解すべきか。2.農林大臣の許可を停止条件とする贈与契約の効力は、許可前に国による買収処分がなされた場合にどうなるか。
規範
1.農地法72条1項但書の期間の終期は、買収令書の交付ないしは公示の日と解すべきである。同規定の趣旨は、売渡しを受けた者の地位が長期にわたり不安定となることを防ぐ点にあるところ、令書の交付等があれば買収の事実を予見でき、地位の不安定性は除去されるからである。2.農地法に基づく許可を要する契約は、許可があるまで効力を生じない。許可前に国による買収処分がなされた場合、以後は原則として許可がなされ得ないため、当該契約は効力を生じないことが確定する。
重要事実
国から未墾地の売渡しを受けたDは、一定の期間内に、農地法73条に基づく農林大臣の許可を得ることなく、Eに対して本件土地を贈与する契約を締結した。しかし、許可が得られる前の昭和32年7月16日、国は農地法72条に基づきDに対して本件土地の買収処分を行った。その後、Eが設定した抵当権の実行により土地を取得したと主張する上告人と、国による買収処分の有効性を争う被上告人との間で、所有権の帰属が争点となった。
あてはめ
1.本件における買戻し期間の終期は、買収令書に記載された買収時期ではなく、令書の交付時である。これによりDの地位の不安定性は解消されているため、国の買収処分は期間内になされた有効なものといえる。2.D・E間の贈与契約は、農林大臣の許可を要するものであるところ、許可が出る前に国が適法な買収処分を完了した。この時点で農林大臣が許可を与えることはもはやあり得ず、契約の効力発生に必要な法定の条件を具備することが確定的に不可能となった。したがって、本件贈与契約は無効であり、Dは所有権を失っている。
結論
本件贈与契約は無効であり、それに基づく抵当権設定及び上告人による競落も権利を取得させるものではない。国による買収処分は有効であり、上告人は所有権を主張できない。
実務上の射程
行政処分(買収)の介入による私法上の契約の流動的無効状態の確定(無効化)を認めた事例。また、法定期間の解釈において、処分の効果発生時ではなく、処分の告知(知得可能性)をもって期間の充足を認める判断手法は、他の行政法上の期間制限規定の解釈においても参考となる。
事件番号: 昭和36(オ)1021 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 破棄差戻
一 農地買収処分の無効確認訴訟は、処分庁たる県知事を被告として提起することができる。 二 農地買収処分の相手方が買収令書の受領を拒否しても、右処分を了知しうべき状態におかれたものとして、右処分の効力を認めることができる。
事件番号: 昭和24(オ)115 / 裁判年月日: 昭和28年4月24日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収には民法177条の適用がなく、未登記の贈与等による所有権移転も国に対抗できる。また、昭和22年改正前の農地調整法下では、農地賃貸借の合意解除に地方長官の許可は不要である。 第1 事案の概要:上告人A1は、昭和18年2月に本件農地を上告人A2に贈与し引き渡したが…
事件番号: 昭和41(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和42年7月21日 / 結論: 棄却
地方公共団体の技術吏員は、知事から、その権限に属する事務の一部を特定して、委任をうけ、または授権された場合にかぎり、自己の名においてまたは知事を代理して、知事の権限を行使することができる。
事件番号: 昭和40(行ツ)63 / 裁判年月日: 昭和42年4月13日 / 結論: 棄却
一 町村制のもとにおいて村が知事の許可なしに行なつた基本財産の処分行為であつても、町村制の廃止後は、地方自治法附則第一一条により、完全にその効力を生ずるにいつたと解すべきである。 二 自作農創設特別措置法第四〇条ノ二に基づく牧野の買収処分により国が所有権を取得した場合において、その所有権の取得およびその後の所有権の取得…