民訴法第四二〇条第一項但書後段にいう「之ヲ知リテ主張セサリシトキ」のなかには、当事者が、再審事由のあることを知りながら、上訴を提起しなかつた場合をも含むものと解すべきである。
民訴法第四二〇条第一項但書後段の法意
民訴法420条1項
判旨
再審の訴えにおける補充性(民訴法338条1項但書)の「これを知って主張しなかったとき」には、上訴を提起したが主張しなかった場合のみならず、上訴を提起せずに判決を確定させた場合も含まれる。
問題の所在(論点)
民事訴訟法338条1項但書(旧420条1項但書)の「当事者が上訴によりその事由を主張したとき、又はこれを知って主張しなかったとき」という再審の補充性要件において、上訴自体を提起しなかった場合が含まれるか。また、判断遺脱を知った時期をいつと解すべきか。
規範
民事訴訟法338条1項但書(旧420条1項但書)にいう「これを知って主張しなかったとき」とは、再審事由のあることを知ったにもかかわらず、上訴を提起しながら上訴審においてこれを主張しない場合はもとより、上訴を提起しないで判決を確定させた場合をも含む。また、判断遺脱等の再審事由については、特段の事情のない限り、終局判決の正本の送達により、当事者はその事由を知ったものと推定される。
重要事実
上告人(再審原告)は、前訴の第一審判決において判断遺脱の再審事由があると考え、再審の訴えを提起した。しかし、上告人は昭和40年9月29日に当該第一審判決正本の送達を受けていたにもかかわらず、控訴等の上訴を提起せず、そのまま判決を確定させていた。原審は、上告人が判決正本送達時に再審事由を知り得たにもかかわらず、上訴により主張しなかったとして、再審の訴えを不適法としたため、上告人がこれを不服として上告した。
事件番号: 昭和37(オ)181 / 裁判年月日: 昭和38年7月11日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書の「当事者」とは、当事者の訴訟代理人を含むものと解すべきである。
あてはめ
上告人は第一審判決の正本送達を受けており、その内容は正本の記載から容易に把握可能である。判断遺脱のような事由は、判決内容を確認すれば直ちに判明するものであるから、特段の事情がない限り、正本送達時にその事由を知ったものと解するのが相当である。本件において、上告人は正本送達により事由を知り得たにもかかわらず、上訴を提起せず判決を確定させており、これは「知って主張しなかった」場合に該当すると評価される。
結論
再審の補充性(338条1項但書)を欠くため、再審の訴えは認められない。上告を棄却する。
実務上の射程
再審は上訴による救済が受けられなかった場合等の予備的な救済手段であるため、上訴による救済が可能であったにもかかわらず懈怠した場合には再審を認めないという趣旨である。答案上は、判決内容自体に起因する再審事由(判断遺脱や判決理由の矛盾等)について、控訴・上告等の上訴期間内に是正を求めなかった者の再審請求を封じるロジックとして活用する。
事件番号: 昭和36(オ)918 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 破棄差戻
前訴訟の上告審において、上告が上告期間経過後の申立にかかり、追完の理由がないとして上告却下となつた場合においては、追完事由を主張した時に再審事由を知つていながらこれを主張しなかつたとしても、直ちに、民訴法第四二〇条第一項但書後段にあたるとはいえない。
事件番号: 昭和31(オ)15 / 裁判年月日: 昭和32年8月1日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書にいわゆる当事者とは、当事者の訴訟代理人をも包含する趣旨と解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)173 / 裁判年月日: 昭和32年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおける「当事者が上訴によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったとき」の意義に関し、民事上告事件の審判の特例に関する法律の下であっても、判断遺脱を上告理由として主張することは可能であり、これを主張しなかった場合には再審の訴えは不適法となる。 第1 事案の概要:上告人…