前訴訟の上告審において、上告が上告期間経過後の申立にかかり、追完の理由がないとして上告却下となつた場合においては、追完事由を主張した時に再審事由を知つていながらこれを主張しなかつたとしても、直ちに、民訴法第四二〇条第一項但書後段にあたるとはいえない。
民訴法第四二〇条第一項但書後段にあたるとはいえないとされた事例。
民訴法420条1項但書
判旨
民事訴訟法338条1項但書(旧420条1項但書)にいう「知りて主張せざりしとき」とは、前訴訟において上訴審による判断を受け得る時期に再審事由を知りながら主張しなかった場合を指す。上告期間経過後に事由を知った場合はこれに該当しないが、上告期間内に知りながら不当に期間を徒過させた場合には同規定の適用がある。
問題の所在(論点)
民事訴訟法338条1項但書(旧420条1項但書)の「知りて主張せざりしとき」の意義、特に上告期間経過後に再審事由を知った場合に同条項が適用されるか。
規範
民事訴訟法338条1項但書の趣旨は、再審事由が上訴手続によって是正可能であった場合には、手続の安定を重視して再審を制限する点にある。したがって、「知りて主張せざりしとき」とは、当事者が前訴において上訴により不服を申し立て、上訴審の判断を受け得る時期に当該再審事由を知ったにもかかわらず、これを主張しなかった場合をいうと解するのが相当である。
重要事実
上告人は前訴の判決に対し、再審請求を行った。原審は、上告人の訴訟代理人が昭和27年8月11日頃に再審事由を知っていたと認定し、同法但書を適用して請求を排斥した。しかし、実際の上告期間は同年8月6日に経過しており、上告人の上告申立ては期間徒過により却下されていた。このため、代理人が事由を知った時点では、既に上告審でその事由を主張して判断を受ける余地がなかった。
事件番号: 昭和37(オ)181 / 裁判年月日: 昭和38年7月11日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書の「当事者」とは、当事者の訴訟代理人を含むものと解すべきである。
あてはめ
原審が認定した「再審事由を知った時期(8月11日)」は、既に上告期間(8月6日)を経過した後であり、追完も認められない状況であった。この場合、上告審において当該事由を主張し、その判断を受ける法的可能性がないため、直ちに「知りて主張せざりしとき」に該当するとはいえない。もっとも、もし当事者が上告期間内に事由を知っていたにもかかわらず、あえて期間を徒過させて上告却下を招いたのであれば、上訴審の判断を受け得る余地があったといえるため、同規定の適用を妨げない。原審は上告期間内における知得の有無を審理していない。
結論
上告期間経過後に再審事由を知ったに過ぎない場合には、特段の事情がない限り「知りて主張せざりしとき」には当たらない。上告期間内の知得の有無を審理せずに同規定を適用した原判決には、法令の解釈適用の誤り又は審理不尽の違法がある。
実務上の射程
再審事由の主張制限の範囲を「上訴審で判断を受け得る可能性」を基準に画定した重要判例である。答案作成上は、単に「知っていた」という事実だけでなく、それが「上訴可能な期間内であったか」という手続的状況とセットで検討する必要がある。期間徒過による確定後の知得であれば、再審請求は遮断されない。
事件番号: 昭和41(オ)180 / 裁判年月日: 昭和42年4月27日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書にいう「当事者」のうちには訴訟代理人も含まれると解するのが相当である。
事件番号: 昭和41(オ)833 / 裁判年月日: 昭和41年12月22日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書後段にいう「之ヲ知リテ主張セサリシトキ」のなかには、当事者が、再審事由のあることを知りながら、上訴を提起しなかつた場合をも含むものと解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)272 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審事由である「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したこと」(民訴法338条1項9号)とは、当事者の主張があるにもかかわらず判断を脱漏した場合を指し、当事者の主張がない事項については判断遺脱に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、福岡地裁昭和30年(ワ)第917号の確定判決に対…
事件番号: 昭和27(ヤ)8 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審の訴えにおいて、民事訴訟法(旧法420条、現行338条1項)所定の再審事由を主張しない場合は、訴え自体が不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は、最高裁判所が下した既判力のある判決に対し、再審の訴えを提起した。しかし、当該訴えの提起において、民事訴訟法420条(現行338条1項)…