組合員の相互扶助を基調とし、その経済的地位の向上をはかることを目的とする組合が、組合員に対し、飼料を売却した場合において、その売却価格が組合の購入価格に売却時より当該代金支払時までの日歩四銭の金利を付加したものにすぎないときは、右飼料の売買行為は、民法第一七三条第一号にいう売却にはあたらない。
相互扶助等のためにつくられた組合の組合員に対する売買行為が民法第一七三条第一号にいう売却にあたらないとされた事例
民法173条1号
判旨
組合員間の相互扶助を目的とする組合が、組合員に対し仕入価格に僅かな利息を付加した額で飼料を売渡す行為は、民法173条1号(現174条1号相当)の「産物、商品の売却」には当たらない。
問題の所在(論点)
組合が組合員に対して行った飼料の売渡し行為が、民法173条1号(旧規定)に定める「産物、商品の売却」に該当し、2年の短期消滅時効にかかるか。
規範
民法173条1号(旧規定)にいう「売却」とは、営利を目的として反復継続して行われる商行為としての売買を指す。したがって、営利目的を欠き、相互扶助を基本とする非営利的な取引については、同条の短期消滅時効の適用対象外となる。
重要事実
被上告人である組合は、組合員相互の扶助・親睦を基調とし、経済的地位の向上を図ることを目的とする組織である。当該組合は組合員に対し飼料を売り渡したが、その代金額は、組合自身の仕入価格に、支払日までの日歩4銭という僅かな利息を付加したに過ぎないものであった。
あてはめ
本件組合の目的は相互扶助にあり、利益追求を主眼とするものではない。飼料の売渡価格の設定も、仕入原価に手数料・利息と同視すべき程度の極めて低利な額を加算したのみであり、営利的な「商品の売却」としての実態を欠いている。このような非営利的な分配的取引は、商取引上の迅速な決済を予定した短期消滅時効の趣旨に合致しないため、同条の「売却」には当たらないと評価される。
結論
本件飼料の売買行為は民法173条1号の売却には当たらず、同条の短期消滅時効は適用されない。
実務上の射程
消滅時効規定の改正(2017年)により旧民法173条は削除されたが、特定の取引性質に着目して短期時効の成否を論じる際の「営利性の有無」の判断手法は、改正前規定が適用される事案や、他の商事的規定の解釈において今なお参考となる。
事件番号: 昭和39(オ)1097 / 裁判年月日: 昭和42年3月10日 / 結論: 棄却
漁業協同組合は、民法第一七三条第一号にいう生産者または卸売商人にあたらない。