農業協同組合が、その経済的基礎を確立するため、林ごの移出業者との間に、同人らをして林ごの集荷をさせ、右組合においてその販売委託を受けて所定の手数料を受くべき契約を締結し、同人らに対し林ごの集荷に要する資金を貸し付け、後日その帳尻を準消費貸借に改めた場合は、その借主が右組合の組合員でなくても、特段の事情の認められない限りは、右準消費貸借は、少くとも組合の事業に附帯する事業の範囲内に属するものと認めるを相当とする。
農業協同組合が非組合員との間に締結した準消費貸借が組合の目的の範囲内に属すると認められた事例。
農業協同組合法10条,民法43条
判旨
農業協同組合が非組合員に対し資金を貸し付ける行為は、組合の経済的基礎を確立し、委託販売等の目的達成に必要な範囲内であれば、定款所定の附帯事業に属し有効である。
問題の所在(論点)
農業協同組合が非組合員に対して行った資金貸付行為が、農協法10条及び定款所定の「附帯事業」の範囲内に属し、権利能力の範囲内として有効といえるか。
規範
農業協同組合等の特別法に基づく法人の権利能力の範囲(法10条、定款等)は、明示された目的事業に限定されず、その事業を遂行する上で直接・間接に必要な附帯事業にも及ぶ。非組合員に対する貸付であっても、組合の目的達成や経済的基礎の確立のために行われ、当該取引と目的事業との間に密接な関連性が認められる場合には、附帯事業の範囲内として権利能力に含まれる。
重要事実
農業協同組合(上告人)が、リンゴの委託販売事業を計画し、経済的基礎を確立するためにリンゴ移出業者である非組合員のB1(被上告人)と協定を締結した。その内容は、組合が資金をB1に貸し付け、B1が集荷したリンゴの販売委託を受けて手数料を得るというものであった。この協定に基づき貸付が行われたが、B1の不履行により多額の貸越金が発生したため、B1の保証人B2との間で準消費貸借契約を締結した。原審は、非組合員への貸付は定款及び農協法に反し無効であるとしたため、組合が上告した。
あてはめ
本件貸付は、組合がリンゴの委託販売という本来の事業を行い、所定の手数料を得ることで経済的基礎を確立するために行われたものである。非組合員であるB1に資金を供与することは、組合が販売委託を受けるための集荷を確実にする手段であり、事業遂行上の必要性が認められる。したがって、特段の事情がない限り、本件貸付は定款にいう附帯事業の範囲内に属すると評価される。原審が「非組合員への貸付」という点のみで直ちに無効としたのは、附帯事業の解釈を誤った審理不尽・理由不備があるといえる。
結論
本件貸付は附帯事業の範囲内として有効であり、これを前提とした準消費貸借契約及び保証契約も無効とはいえない。原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
法人の権利能力(民法34条)が「目的の範囲内」にあるかどうかの判断において、判例が「目的達成に必要であれば附帯事業として広く認める」という柔軟な姿勢を示したもの。答案上では、営利法人・非営利法人を問わず、目的外転用の論点において、目的と手段の関連性を論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)663 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が特定の証拠の信憑性や事実認定において、他の債務の存否を考慮することは、あくまで具体的事実問題としての判断であり、法律上の必要的聯関性を要求する法理に反するものではない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間の債権に関する紛争において、原審は「甲第一号証(書面)」が被上告人の組合に対する…