土地の所有者が、その所有権に基づいて、右地上にある建物の所有権を共同相続によつて取得した者らに対し、右建物の収去および土地の明渡を求める訴は、必要的共同訴訟ではないと解すべきである。
土地所有権に基づいて建物共有者に対し建物収去および土地明渡を求める訴は必要的共同訴訟か
民訴法62条
判旨
土地所有者が、地上の建物の共同相続人に対し、所有権に基づいて建物収去土地明渡を求める訴訟は、固有必要的共同訴訟ではない。共同相続人らの負う義務は不可分債務であり、土地所有者は共同相続人各自に対し、順次その履行を請求できると解されるからである。
問題の所在(論点)
建物の共同相続人に対する建物収去土地明渡請求訴訟は、共同相続人全員を被告としなければならない固有必要的共同訴訟か。
規範
建物収去土地明渡請求訴訟は固有必要的共同訴訟ではない。その理由は、①建物所有者の共同相続人が負う義務は不可分債務であり、土地所有者は各人に対し順次その義務の履行を訴求できること、②全員を被告に強制すると訴訟継続中の認諾や訴えの取下げが困難になり不経済であること、③相続人が不明な場合に既になされた判決が無効となるなど手続が不安定になること、④被告の一部に対する債務名義だけでは直ちに強制執行できないため被告の保護にも欠けないことが挙げられる。
重要事実
被上告人(原告)は、土地所有権に基づき、地上建物の所有者である被告Dに対し建物収去土地明渡を求めて提訴した。訴訟中に被告Dが死亡し、相続が発生した。相続人の一人であるEが受継手続を了したが、他にも相続人が存在した可能性がある。上告人は、共同相続人の全員が被告とならなければ当事者適格を欠くと主張し、一部の相続人のみによる手続進行の違法を訴えた。
事件番号: 昭和39(オ)1161 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 棄却
右の場合には、いわゆる固有必要的共同訴訟ではない。
あてはめ
本件における建物収去土地明渡義務は不可分債務であるため、被上告人は共同相続人の一人であるEに対し、係争物件の全部について侵害行為を除去するよう求めることができる。固有必要的共同訴訟と解すると、争う意思のない相続人まで被告とする必要があり、手続上の不経済や不安定を招く。したがって、他の相続人の存在が判明していたとしても、受継手続を了したEのみとの間で手続を進行し、判決を言い渡すことは適法である。
結論
本件訴訟は固有必要的共同訴訟ではなく通常共同訴訟である。一部の共同相続人のみについて手続を進行し判決をしても適法である。
実務上の射程
建物収去土地明渡請求の被告適格に関する重要判例である。答案では、実体法上の管理処分権の帰属だけでなく、訴訟経済や手続の安定という観点から固有必要的共同訴訟の成否を否定する根拠として引用する。また、執行段階では全員に対する債務名義が必要になるという実務上の留意点も併せて示すのが有益である。
事件番号: 昭和42(オ)890 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 破棄差戻
通常の共同訴訟においては、共同訴訟人間に共通の利害関係があるときでも、補助参加の申出をしないかぎり、当然には補助参加をしたと同一の効果を生ずるものではない。
事件番号: 昭和31(オ)814 / 裁判年月日: 昭和32年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者が建物所有者とその賃借人に対し明渡しを求める訴訟は必要的共同訴訟ではなく、また使用貸借の期間満了に基づく土地明渡請求は、締結時の諸般の事情に照らし権利の濫用に当たらない。 第1 事案の概要:土地所有者である被上告人は、借主(D会)との間で使用貸借契約を締結し土地を貸し付けた。同土地上には…
事件番号: 昭和41(オ)263 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
借地上の建物につき登記がなされる以前に右敷地の所有権移転があつたため、建物所有者が右敷地取得者に借地権を対抗できない場合にあつては、当該建物を譲り受けた者は、右敷地取得者に対し建物買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和31(オ)582 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】組合員が組合の共同事業のために買い受けた土地は、登記名義にかかわらず組合財産として組合員の共有に属するが、他の組合員全員が持分を放棄し特定の組合員の単独所有とすることを承認した場合には、当該組合員の単独所有に帰する。 第1 事案の概要:被上告人、D、Eの3名は、アイスケーキ製造販売の共同事業(組合…