一宅地建物取引業を営む商人が不動産の売買契約を成立させるため、買主を現場に案内し、契約の締結に立ち会い、売買代金額について売主、買主の両者の言い分を調整して、両者をして買主の希望価額以下に合意させ、目的物の受渡、代金の授受に関与した等判示事実関係のもとにおいては、買主との間に明示の売買の媒介契約がされなかつたとしても、黙示の媒介契約がされたものと解することができ、右商人は、商法第五一二条により、買主に対し、右不動産売買の媒介の報酬を請求することができる。 二、買主から不動産売買の媒介の依頼を受けた仲介人が数人あるときは、各仲介人は、特段の事情のないかぎり、売買の媒介に尽力した度合に応じて、報酬額を按分して、買主に対し請求することができると解するのが相当である。
一、不動産売買の黙示の媒介契約がされたとして報酬請求権が認められた事例 二、不動産売買の媒介を依頼された者が数人あるときの報酬額の配分基準
商法512条,商法550条,民法648条,宅地建物取引業法(昭和39年法律第166号による改正前のもの)17条
判旨
商人がその営業の範囲内の行為を委託され、報酬の定めのないままこれを行った場合、商法512条に基づき相当な報酬を請求できる。また、複数の媒介人が存在する場合、特段の事情がない限り、各自は媒介に尽力した度合いに応じた按分額を請求できる。
問題の所在(論点)
1. 明示の報酬合意がない場合、商人は媒介報酬を請求できるか(商法512条の適用要件)。2. 媒介人が複数存在する場合、各自が請求できる報酬額の算定基準はいかにあるべきか。
規範
1. 商法512条は、商人がその営業の範囲内の行為をすることを委託され、これを行った場合において、委託契約に報酬の定めがないときは、商人は委託者に対し相当な報酬を請求できるという趣旨である。2. 複数の仲介人が存在する場合、特約等の特段の事情がない限り、各自は売買の媒介に尽力した度合いに応じて、報酬額を按分して請求できる。
重要事実
宅地建物取引業者である被上告人(原告)は、上告人(買主)と売主との間の不動産売買を媒介した。具体的には、上告人の現場案内、売買代金額の調整(当初の開きを1,700万円に合意させた)、売買契約への立ち会い、被上告人用意の契約書への記名捺印、物件引渡しや登記書類の取りまとめへの関与を行った。これらの活動は主として上告人の利益のためになされ、上告人もその経過を知り得た。一方で、明示の媒介契約や報酬額の合意は存在しなかった。
あてはめ
1. 被上告人は宅建業者として営業の範囲内の行為(媒介)を行っており、上告人はその事実を認識しながら関与を受けている。したがって、遅くとも売買成立時までに報酬額の定めのない黙示の媒介契約が成立したといえる。よって商法512条により相当報酬請求権が認められる。2. 本件では複数の媒介人が関与していたが、被上告人は価格交渉から契約書の準備、履行の立ち会いまで主導的な役割を果たしており、その尽力度は大きい。特段の事情がない限り、この尽力度に応じた按分額(25万円)を請求することは正当である。
結論
被上告人は商法512条に基づき、尽力した度合いに応じた相当な報酬(25万円)を上告人に対して請求することができる。
実務上の射程
商人の報酬請求権(商法512条)の典型事例である。答案上は、明示の契約がなくとも「営業範囲内」かつ「委託(黙示含む)」があれば相当報酬を請求できる点を確認する際に用いる。また、複数人が関与する共同媒介のケースでは「尽力度に応じた按分」という基準が実務上の指針となる。
事件番号: 昭和40(オ)228 / 裁判年月日: 昭和43年8月20日 / 結論: 破棄差戻
宅地建物取引業者が売買の媒介を行なう場合に受ける報酬について、愛知県宅地建物取引業者の報酬額に関する規則(昭和二七年愛知県規則第五九号)の定める最高額により授受される慣習が存在するとするためには、これを相当として首肯するに足りる合理的根拠を必要とし、原判決挙示の証拠のみによつてたやすくこれを認定したのは、審理不尽・理由…