土地の一部を目的とする賃貸借について、当該契約の趣旨に適した場所が相当数あるときは、その賃借部分を特定して引き渡す賃貸人の債務は、選択債務にあたる。
土地の一部を目的とする賃貸借における賃借部分の特定について賃貸人の負担する債務が選択債務にあたるとされた事例
民法401条,民法406号
判旨
広大な土地の一部を面積のみ指定して賃貸借の目的物とした場合、その土地内に目的物の条件を満たす場所が複数存在する限り、当該債務は選択債務(民法406条)に該当する。
問題の所在(論点)
一筆の土地の一部を、具体的な位置を特定せず面積のみ指定して賃貸借の目的とした場合、当該引渡債務はどのような性質を有するか。選択債務としての性質を有するか、あるいは種類債務や単なる未特定の債務に留まるかが問題となる。
規範
債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるべきときは、その債権は選択債務となる(民法406条)。種類債務と異なり、特定の範囲(目的物である一筆の土地等)の中に、契約上の条件を満たす給付の候補が独立して複数存在し、そのいずれかを選択して給付すべき関係にある場合には、選択債務に関する規定が適用される。
重要事実
賃借人(被上告人)と賃貸人(上告人)は、面積340坪余りの一筆の宅地のうち、50坪を賃貸借の目的物とする契約を締結した。当該土地内には、表道路に面しており、かつ賃借人が営む米屋の店舗として適した場所が相当箇所存在していた。賃借人は、賃貸人に対し、当該土地のうち50坪の引渡しを求めた。
あてはめ
本件において、賃貸借の対象となる50坪の土地は、340坪余りの広大な宅地の一部である。原審の認定によれば、当該土地内には「表道路に面し、かつ米屋を営むに適した土地」という契約上の目的に適う場所が複数箇所(相当箇所)存在している。このように、一定の範囲内に具体的な給付の候補が複数存在し、その中から特定の50坪を選定して給付すべき状況にあるといえる。したがって、本件の引渡債務は、複数の候補から一つを選択する関係にあるものとして、民法406条以下の選択債務に当たると解するのが相当である。
結論
本件土地の引渡債務は選択債務に該当し、選択権の行使等に関する民法の規定が適用される。したがって、賃貸人は土地のうち50坪を引渡すべき義務を負う。
実務上の射程
本判決は、土地の一部を面積指定で売買・賃貸した場合の法的性質を選択債務と解した。答案上は、目的物が特定されていない場合でも、給付の候補が限定された範囲内に複数存在すると評価できれば、406条を適用して選択権の帰属(406条)や移転(408条)の議論へ繋げるための根拠として活用できる。
事件番号: 昭和53(オ)1047 / 裁判年月日: 昭和54年4月17日 / 結論: 破棄差戻
土地の一部を目的とする賃貸借において、その契約の趣旨に適した部分が相当数あるときは、その賃借部分を特定して引き渡すべき賃貸人の債務には、選択債務に関する民法四〇六条以下の規定の適用がある。
事件番号: 昭和44(オ)26 / 裁判年月日: 昭和44年4月22日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部の賃借人は、特段の事情のないかぎり、土地区画整理事業の施行者から、使用収益部分の指定を受けることによつて、はじめてその部分について、現実に使用収益をすることができる。