抵当権の設定登記後に当該不動産について所有権移転請求権保全の仮登記を経由した者は、その後に登記された抵当権の実行による競落人に対し、その権利を対抗することができないものと解すべきである。
抵当権設定登記後に当該不動産について所有権移転請求権保全の仮登記を経由した者とその後に登記された抵当権の実行による競落人との優劣
民法177条,競売法2条
判旨
不動産競売において、実行された抵当権より前に仮登記を備えていても、当該仮登記より先順位の抵当権が存続していた場合は、買受人に対して権利を対抗できない。
問題の所在(論点)
後順位抵当権の実行による競売において、実行された抵当権より先順位だが、当該物件に存する最先順位の抵当権よりは後順位である仮登記権利者は、その権利を買受人に対抗できるか。抵当権消滅主義と買受人が引き受ける権利の基準時点が問題となる。
規範
不動産に数個の抵当権が設定されている場合、後順位抵当権者の申立てにより競売が実行されても、競落当時存した全ての抵当権は消滅し、買受人は抵当権の負担のない所有権を取得する。したがって、不動産は競落当時存した「最先順位の抵当権」設定登記当時の権利状態で競売に付されるものと解すべきであり、当該最先順位の抵当権設定登記の後に所有権等の権利を取得した者は、その権利を法的な対抗要件(仮登記等)を備えていても買受人に対抗することはできない。
重要事実
本件家屋には、昭和26年11月15日に第5順位の抵当権(山梨県信用保証協会)が設定・登記されていた。その後、上告人が所有権移転請求権保全の仮登記を備えた。さらにその後、別の抵当権が設定され、当該後順位抵当権の実行により、被上告人が本件家屋を競落した。上告人は、自らの仮登記が競売実行の申立てに係る抵当権よりも先んじていることを根拠に、買受人(被上告人)に対して権利を主張した。
事件番号: 昭和40(オ)656 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一審判決の送達が不適法であつても、控訴審において異議なく訴訟を遂行してきた以上、適法な上告理由とならない。
あてはめ
本件家屋には、上告人の仮登記よりも前に登記された最先順位の抵当権が存し、競落時まで存続していた。競売の実行により、この最先順位の抵当権を含む全ての抵当権が消滅するため、買受人は最先順位の抵当権設定時を基準としたクリーンな所有権を取得する。上告人の仮登記は、この基準となる最先順位の抵当権よりも後に備えられたものである以上、たとえ実行された抵当権より先順位であったとしても、買受人に対してその権利を対抗することはできない。
結論
上告人は仮登記に基づく所有権の取得を買受人である被上告人に対抗できない。
実務上の射程
抵当権消滅主義(民事執行法59条)の原則を確認する判例である。答案上では、不動産上の複数の権利関係が競売で整理される際、買受人が取得する権利の範囲を確定する基準が「実行された抵当権」ではなく「消滅する抵当権のうちの最先順位のもの」であることを示す際に用いる。差押えや仮処分の執行が絡む事案でも、この「最先順位」の理屈は共通の判断枠組みとして重要となる。
事件番号: 昭和41(オ)352 / 裁判年月日: 昭和41年10月20日 / 結論: 棄却
競売法による競売手続において、その手続の完了前に競売の基本である抵当権が消滅した場合には、右消滅による抵当権抹消登記手続を経由すると否とを問わず、競落人は目的不動産の所有権を取得できない(昭和三七年(オ)第一一二号同年八月二八日第三小法廷判決、民集一六巻八号一七九九頁参照)。
事件番号: 昭和39(オ)103 / 裁判年月日: 昭和40年3月16日 / 結論: 棄却
真正なる所有者がその所有名義を回復するには、必ずしも抹消登記手続をなすことを要せず、所有権移転の登記手続の方法によつてもこれをなしうると解するのが相当である。