一、海上衝突予防法第二五条第一項による航路筋の右側航行は同法の航法に関する諸規定および船員としての通常の経験と慣行に照らして、諸般の事情から、船舶の安全な運航のために狭い水道の右側に就くことはまたは右側を続行することを避けるのが相当である場合には、免除されるものと解すべきである。 二、海上衝突予防法第二五条の適用ある狭い水道においても、二隻の動力船が互に進路を横切る関係にあり、相当の距離と時間の余裕をもつて衝突のおそれを予測できる状態にあるときは、右両船に同法第一九条および第二一条が適用されるものと解すべきである。
一、海上衝突予防法第二五条第一項による航路筋の右側航行が免除される場合 二、海上衝突予防法第二五条の適用ある狭い水道における同法第一九条第二一条の適用の有無
海上衝突予防法25条,海上衝突予防法19条,海上衝突予防法21条
判旨
海上衝突予防法25条1項の右側航行義務は、航法規定や船員としての通常の経験・慣行に照らし、船舶の安全な運航のために右側航行を避けるのが相当な場合には免除される。その判断にあたっては、現実の切迫した危険までを要さず、軽度の運航上の危険を避けるための合理的措置であれば足りる。
問題の所在(論点)
狭い水道における右側航行義務を定める海上衝突予防法25条1項の「安全であり、且つ実行に適する場合」の意義、および同義務が免除されるための要件が問題となる。
規範
海上衝突予防法25条1項が右側航行を「それが安全であり、且つ実行に適する場合」に限定している趣旨は、船舶の安全な運航を確保する点にある。したがって、右側航行が免除されるためには、単に右側以外を航行しても危険がないというだけでは足りないが、他面で現実に切迫した危険があることまでも要しない。航法に関する諸規定や船員としての通常の経験・慣行に照らし、諸般の事情から船舶の安全な運航のために右側航行を避けることが相当とされる場合には、水道の中央または左側を航行することも許容される。
重要事実
三光丸は、運河入航時に東行する第二馬来丸(他船)を認め、同船の前路を横切って右側に就くことが困難であったため、一旦左側を航行し機会を見て右側に移る方法を選んだ。入航後、後方から第二馬来丸が接近したため、右側に移る機会を得られないまま左側航行を継続したところ、対向する金剛丸と衝突した。金剛丸は衝突の2分前に三光丸を視認していたが、作業打合せに没頭し避譲措置を怠っていた。上告人は、三光丸が停止して他船を先行させるべきであり、左側航行は同法25条1項に違反すると主張した。
あてはめ
三光丸の左側航行は、先行する第二馬来丸の進路を避けつつ、自船を安全かつ速やかに右側に就かせようとする意図に基づくものであった。第二馬来丸が係留予定地に近く減速が予想されたこと、及び停止して先行させる方法とどちらが早く右側に就けるか予想困難な状況であったことに鑑みれば、この措置は運航方法として誤りとはいえない。また、他船を先行させるために停止等をした場合、他船の係留態勢によってはかえって操船上の危険を被るおそれもあった。これらを総合すれば、三光丸の措置は当時の状況下で海上運航者として採るべきやむを得ない措置であり、安全な運航のために右側航行を避けるのが相当な場合に当たる。
結論
三光丸の航行は海上衝突予防法25条1項に違反せず、同船を認めていながら注視を怠った金剛丸に同法19条等の違反が認められる。三光丸の左側航行は適法である。
実務上の射程
狭い水道における航法義務の柔軟な解釈を示した重要判例である。答案上は、形式的な条文適用の例外を認める際の規範として、「船員としての通常の経験・慣行」や「安全な運航のための相当性」という考慮要素を用いるべきである。また、義務違反の有無が他船の避譲義務(本件では19条)の成否に影響する局面でも参照しうる。
事件番号: 昭和25(オ)60 / 裁判年月日: 昭和26年7月3日 / 結論: 棄却
一 開港港則施行規則第一〇条の「汽船防波堤ノ入口ニ於テ出会ノ虞アルトキ」とは、入港船が出港船を見て入口において出会うかも知れないと予測されるときの意味であつて、入口において出会つたかどうかの結果によつて遡つて判断すべきものではない。 二 機船底曳網漁業に従事する発動機附帆船は、開港港則施行規則第一四条及び第四五条にいう…
事件番号: 昭和32(オ)817 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
一 裁判官の通常の知識により認識し得べき推定法則は、その認識のためとくに鑑定等の証拠調を要するものではない。 二 互に航路を横切る両船が「衝突ノ虞アル」見合関係にあるとは、当該両船の船長が実際に衝突の危験を認めた関係にあることをさすものではなく、注意深い船長が注意していたとすれば衝突の危険があるものと認むべき関係にある…