共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して流水を汚染し違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が、右違法な加害行為と相当因果関係にある全損害について、その賠償の責に任ずべきである。
共同行為者の流水汚染により惹起された損害と各行為者の賠償すべき損害の範囲
民法709条,民法719条,国家賠償法2条1項
判旨
共同行為者各自の行為が客観的に関連し、独立に不法行為の要件を備える場合には、各自が加害行為と相当因果関係にある全損害について賠償責任を負う。流水汚染による損害についても、工場廃水がなければ減収等の損害が発生しなかったといえるときは、当該廃水放出と損害との間に相当因果関係が認められる。
問題の所在(論点)
流水汚染のように複数の汚染源が存在し得る場合において、特定の事業者の廃水放出と農作物の減収等の損害との間に相当因果関係が認められるか、また、浄化のための井戸掘削費用が損害に含まれるか。
規範
1. 共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が右違法な加害行為と相当因果関係にある損害についてその賠償の責に任ずべきである。 2. 相当因果関係の存否は、当該加害行為(工場廃水の放出)がなければ損害(農作物の減収等)が発生しなかったといえるかという事実的因果関係を基礎に、その範囲内の全損害について認めるべきである。
重要事実
上告人は工場廃水を山王川に放出した。山王川の流水は、都市下水等によっても汚染されていたが、上告人の工場廃水は流水の約15倍の全窒素を含有しており、稀釈後も水稲耕作の最大許容量をはるかに超過する窒素濃度を帯びていた。被害者(被上告人ら)は、この汚染により水稲の減収を被ったほか、汚染された流水を浄化・稀釈するために深井戸を掘削して費用を支出した。上告人は、他者の下水等の寄与や旱害の影響を理由に因果関係を争った。
あてはめ
1. 減収損害について、山王川には自然の湧水もあり、廃水がなければ灌漑用水の確保は可能であった。しかし、本件工場廃水は極めて高濃度の窒素を含み、放出により流水が耕作に有害・不適当な状態となった。したがって、廃水放出がなければ減収は発生しなかったといえ、直接の原因として相当因果関係が認められる。 2. 井戸掘削費用について、設備設置後も流水の窒素濃度は依然として最大許容量を超えていた。汚染された流水を耕作に使用するためには井戸水による浄化・稀釈が必要不可欠であったことから、浄化方法としての井戸掘削費用と廃水放出との間にも相当因果関係が認められる。
結論
上告人の工場廃水放出は不法行為を構成し、上告人は相当因果関係の範囲内にある減収損害および井戸掘削費用について賠償責任を負う。
実務上の射程
公害等の共同不法行為において、各加害者の寄与度に関わらず、各自が独立に要件を満たす限り、相当因果関係のある全損害について連帯的な責任(不真正連帯債務)を負わせる実務上の指針となる。また、損害回避のために支出した費用(本件の井戸掘削費)についても、その必要性・相当性があれば相当因果関係に含まれることを示している。
事件番号: 昭和33(オ)362 / 裁判年月日: 昭和35年10月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】トラックの運転者が車体左側から大幅に食み出した積荷に気付かず走行し、歩行者に衝突させて傷害を負わせた場合、不法行為責任(民法709条)を負う。また、他の車両が事故の原因である可能性が証拠上否定されるならば、当該トラックの走行と被害者の傷害との間の因果関係が認められる。 第1 事案の概要:上告人A1…