土地賃貸人が賃貸借契約の終了を理由に土地賃借人に対して建物収去土地明渡を求める訴訟の係属中に、土地賃借人から右建物を賃借し、これに基づき右建物およびその敷地の占有を承継した者は、民訴法第七四条第一項にいう「其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタ」第三者にあたる。
民訴法第七四条第一項にいう「其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタ」第三者にあたるとされた事例。
民訴法74条1項
判旨
建物収去土地明渡請求訴訟の係属中、被告(賃借人)から地上建物の一部を賃借し、その敷地の占有を承継した者は、民事訴訟法上の「訴訟の目的である債務を承継した者」に該当し、訴訟引受けの対象となる。たとえ賃借人に対する請求が契約上の債権的請求であり、承継人に対する請求が所有権に基づく物権的請求であっても、紛争の主体たる地位の承継が認められる。
問題の所在(論点)
土地賃貸借契約の終了に基づく建物収去土地明渡請求訴訟の係属中に、被告から建物の一部を賃借して敷地を占有した者は、民事訴訟法にいう「訴訟の目的である債務を承継した者」にあたるか。特に、被告への請求が債権的請求であるのに対し、占有承継者への請求が所有権に基づく物権的請求となる場合でも承継が認められるかが問題となる。
規範
民事訴訟法上の「訴訟の目的である債務を承継した者」とは、紛争の主体たる地位を承継した者を指す。建物収去義務は建物からの退去義務を包含するため、占有の承継によって退去義務の存否に関する紛争が移行したといえる場合には、債務の承継に該当する。また、前主に対する請求が債権的請求で、承継人に対する請求が物権的請求であるという権利性質の差異は、承継の成否を左右しない。
重要事実
土地所有者(賃貸人)である原告が、土地賃貸借契約の終了を理由に、借地人である被告に対し、地上建物の収去および土地の明渡しを求めて提訴した。ところが、その訴訟の係属中に、第三者が被告から地上建物の一部を賃借し、当該建物部分および敷地の占有を開始した。そのため、原告は当該第三者に対し、訴訟引受け(旧民訴法74条、現行47条・50条)の申立てを行った。
事件番号: 昭和30(オ)218 / 裁判年月日: 昭和32年9月17日 / 結論: 破棄差戻
民訴第七三条は承継人が自ら進んで既存の訴訟に加入しうることを認めたものであり、また同法第七四条は従来の訴訟当事者が承継人を強制して訴訟に参加せしめうることを認めたものであつて、その承継人は訴訟の目的たる権利または債務のいずれの承継人であるとを問わない。
あてはめ
土地賃借人が負う建物収去義務には建物からの退去義務が含まれるところ、第三者が建物占有を承継したことで、退去義務の存否という紛争の主体たる地位が第三者に移行したといえる。実質的に見ても、第三者の占有の適否は前主の賃貸借関係の成否という同一の証拠関係(訴訟資料)に依存しており、新訴を提起させるよりも既存の訴訟を利用させる方が実効的な解決に資する。この要請は、請求の法律的根拠が債権的か物権的かという相違によって妨げられるものではない。したがって、本件第三者は紛争の主体たる地位を承継したといえる。
結論
建物の一部を賃借し占有を承継した第三者は、民事訴訟法上の債務承継人に該当する。よって、当該第三者に対する訴訟引受けの申立ては許容される。
実務上の射程
訴訟承継における「承継」を、実体法上の権利義務の承継のみならず、訴訟法的観点から「紛争の主体たる地位の移転」と広く捉える立場を明確にした。賃貸借終了に基づく明渡請求中に占有を移転された場合、民訴法50条の引受承継を活用して、一回的解決を図るための重要な論拠となる。
事件番号: 昭和42(オ)890 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 破棄差戻
通常の共同訴訟においては、共同訴訟人間に共通の利害関係があるときでも、補助参加の申出をしないかぎり、当然には補助参加をしたと同一の効果を生ずるものではない。
事件番号: 昭和33(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物を共有して土地を不法占有する者は、共同不法占有者の一人として、他の共有者の有無にかかわらず土地全体を明け渡す義務を負う。この場合、判決の既判力が他の共有者に及ばないことは、当該共有者に対する明渡し請求の可否に影響しない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dほか1名と本件建物を共有し、当該建物の…
事件番号: 昭和39(オ)943 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
賃借地上の賃借人所有の家屋が第三者に無断譲渡された後に右家屋が他に賃貸された場合において、家屋買取請求権が行使されたときは、土地所有者は、右家屋の所有権を取得すると共に、家屋賃借人に対する賃貸人の地位をも継承する。
事件番号: 昭和41(オ)1406 / 裁判年月日: 昭和42年7月6日 / 結論: 棄却
建物とともに敷地の賃借権が転々譲渡され、賃借権の各譲渡について賃貸人の承諾のない場合であつても、賃借権存続期間中に譲りうけた最後の譲受人は、建物買取請求権を有する。