主債務者が債務者の金員支払請求に対し右金員の支払確保のために振り出された手形の返還との引換給付の抗弁権を有する場合には、連帯保証人は、右債権者の金員支払請求に対し、自己あてに手形を交付すべき旨の引換給付の抗弁を主張することができる。
主債務者の有する引換給付の抗弁権と連帯保証人による引換給付の抗弁の主張の可否。
民法448条,民法458条,民法533条,手形法2篇
判旨
主たる債務者が債権者に手形を交付した際、保証人は、主たる債務者が有する引換給付の抗弁権を援用できるだけでなく、自己の求償権確保のために自己への手形交付を求める抗弁も行使できる。
問題の所在(論点)
主たる債務者が債権者に対して手形を交付している場合、保証人は、債権者からの保証債務履行請求に対し、当該手形との引換給付の抗弁を主張することができるか。また、その際の手形の交付先は誰か。
規範
保証債務の付随性に基づき、保証人は主たる債務者より不利益な状態において債務を履行する責任を負わない。したがって、貸金債権の支払確保のために手形が振り出された場合、保証人は二重払の危険を防止するため、債権者からの保証債務履行請求に対し、当該手形と引換えにのみこれに応ずる旨の抗弁(引換給付の抗弁)を主張しうる。また、保証人が主たる債務者に対し求償権等を行使する際、主たる債務者が保証人に対して手形返還との引換給付を主張しうる以上、保証人は自己への手形交付を債権者に主張できると解すべきである。
重要事実
主たる債務者D社及び連帯保証人Eは、被上告人(債権者)からの借入金の支払確保のため、約束手形計6通を振り出し、被上告人に交付した。その後、被上告人が他の連帯保証人である上告人Aに対し、準消費貸借契約に基づく保証債務の履行を求めて提訴した。これに対し上告人Aは、二重払の危険があるとして、右約束手形と引換えにのみ支払う旨の抗弁を主張した。
あてはめ
保証債務は主たる債務に従たるものであり、連帯保証であってもこの性質は変わらない。主たる債務者は二重払防止のため手形返還との引換給付を主張できるところ、保証人にこの抗弁を認めなければ、保証人は主たる債務者より不利な状態に置かれる。また、保証人が主たる債務者に求償する際、主たる債務者は手形による二重払の危険を理由に保証人に対し引換給付を主張できる。そのため、保証人が円滑に求償権等を行使できるよう、債権者は保証人に対し手形を交付すべき義務を負う。本件において上告人Aは連帯保証人であり、D社らが手形を交付している以上、Aへの手形交付と引換えに支払うべきである。
結論
上告人は、被上告人から別紙目録記載の約束手形6通の交付を受けるのと引換えに、保証債務を支払えば足りる。上告人の引換給付の抗弁を排斥した原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
手形が担保的機能を果たしている場合の保証人の抗弁権を確立した。実務上は、主たる債務者が有する同時履行関係(または抗弁権)の保証人による援用として構成する。また、保証人への直接の手形交付(返還)を認めることで、保証人の求償実効性を担保している点に特徴がある。
事件番号: 昭和27(オ)632 / 裁判年月日: 昭和29年4月2日 / 結論: 棄却
金額および満期日を同じくする約束手形を融通手形として相互に交換的に振り出し交付するにあたり、相互にこれを対価とする合意がある場合において、一方の手形金の支払がなされたときは、反対の事情のないかぎり、他方の手形の振出人は、その受取人に対して融通手形の抗弁をもつて対抗し得ない。