他人の代理人と称して、金銭消費貸借契約を締結するとともに、みずからその他人のため連帯保証契約を締結した者が、債権者の提起した右連帯保証債務の履行を求める訴訟において、代理権の不存在を主張して連帯保証債務の成立を否定することは、特別の事情のないかぎり、信義則上許されない。
無権代理人から代理行為の相手方に対し代理権の不存在を主張することが信義則上許されないとされた事例
民法1条,民法117条,民法448条
判旨
無権代理人として主たる債務を締結し、かつ自ら連帯保証人となった者は、債権者からの連帯保証債務履行請求に対し、主たる債務の無権代理を理由に保証債務の附従性を主張して履行を拒むことは信義則上許されない。
問題の所在(論点)
無権代理人が自ら保証人となった場合において、当該無権代理人が主たる債務の無権代理(不成立)を理由に、保証債務の履行を拒絶することが許されるか。保証債務の附従性と信義則の関係が問題となる。
規範
他人の代理人と称して金銭消費貸借契約(主たる債務)を締結し、かつ自らその債務を連帯保証した者が、債権者からの保証債務履行請求に対し、自己の代理権欠如を理由に主たる債務の不成立を主張し、ひいては保証債務の附従性を援用してその成立を否定することは、特別の事情のない限り、信義則(民法1条2項)上許されない。
重要事実
亡Dは、EおよびFの代理人と称して被上告人から金員を借り入れる金銭消費貸借契約を締結した。同時に、DはEらの債務を連帯保証する旨の契約を被上告人と締結した。その後、Dの相続人である上告人らに対し、被上告人が連帯保証債務の履行を求めて提訴したところ、上告人らは、Dに代理権がなかったため主たる債務が成立しておらず、附従性により保証債務も成立しないと主張して争った。
あてはめ
Dは自らEらの代理人と称して主たる債務を負担させる行為を行い、かつそれを前提として自ら保証人となっている。債権者である被上告人は、Dの言動を信頼して取引に入ったといえる。このような立場にあるD(およびその相続人)が、後になって自らの無権代理行為を理由に、主たる債務の不成立、ひいては保証債務の免責を主張することは、自らの矛盾した挙動により債権者の信頼を裏切るものであり、著しく正義公平に反する。したがって、本件において「特別の事情」は認められず、信義則による制限が課されるべきである。
結論
上告人らが代理権の不存在を主張して連帯保証債務の成立を否定することは許されない。したがって、保証債務の履行請求は認められる。
実務上の射程
無権代理人の責任(117条)とは別に、信義則(1条2項)によって保証債務そのものの履行を基礎付ける法理である。答案上は、まず附従性の原則から主たる債務の不成立を指摘しつつ、形式的な法適用が著しく不当な結果を招く場合に、禁反言の理則(信義則)を適用して反論を封じる構成で用いる。
事件番号: 昭和37(オ)680 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
使用者たる会社が月賦販売の仲介業者との間に包括的契約を締結し、かつ、従業員の物品購入代金等の債務について連帯保証契約を締結することは、使用者たる会社の事業の範囲に属する。