一 執行吏が債権者の委任をうけ、いわゆ代替執行を行なつた場合には、その執行行為は国の公権力の行使に当る公務員の職務行為というべきである。 二 執行吏は、立木収去を命じた確定判決の強制執行をするにあたり、該執行を移植適期まで延期する義務を負わない。
一 執行吏の行なう代替執行と国家賠償法第一条第一項 二 確定判決に基づく強制執行を延期する義務の存否
国家賠償法1条,民法414条2項,民訴法733条
判旨
代替執行において執行吏が行う執行行為は、債務者の意思を排除して国家の強制執行権を実現する行為として「公権力の行使」に当たるが、生立木の収去につき移植適期まで執行を延期したり、仮植等の措置を講じなかったとしても、直ちに職務上の義務に違反し違法となるものではない。
問題の所在(論点)
1. 代替執行に基づく執行吏の行為が国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に当たるか。2. 執行吏が移植適期まで執行を猶予せず、また仮植等の措置を講じなかったことが、職務上の注意義務に違反し違法となるか。
規範
1. 代替執行(民法414条2項等)は、債務者の意思を排除して国家の強制執行権を実現するものであるから、その執行行為は「公権力の行使」に該当する。2. 執行吏は、確定判決に基づく委任を受けた以上、速やかに執行をなすべき職務上の権限を有し、債務者の便宜のために執行時期を延期したり、特別の保護措置(仮植等)を講じたりすべき法的義務までは原則として負わない。
重要事実
債権者Eは、債務者(被上告人)に対し生立木の収去・土地明渡しを命じる確定判決を得た。債務者が任意に履行しなかったため、Eは執行吏Fに代替執行を委任した。執行吏代理Gは、4月1日に生立木を抜き取り、水をやらずに土地の一隅に積み重ねて差し押さえた。その結果、生立木の一部が枯死し、債務者は損害を被ったとして国賠請求を提起した。原審は、移植適期まで執行を待たず、仮植等の注意義務を怠ったとして違法性を認めた。
あてはめ
1. 本件執行行為は、誰が代行するかを問わず債務者の意思を排除する公権力行使である。2. 債務者には判決確定から執行まで約10ヶ月の猶予があり、自ら適期に移植する機会があった。債権者は確定判決に基づき直ちに執行する権利があり、執行吏も速やかに執行すべき立場にある。したがって、移植適期まで執行を延期する義務はない。3. 収去にあたり仮植等の手段をとることは好ましいとしても、これを欠いたことが直ちに執行行為を違法とするものではない。
結論
執行吏の行為に職務上の違法は認められず、国家賠償請求は棄却される。
実務上の射程
執行吏による代替執行が「公権力の行使」に当たること、および執行の適時性・方法に関する裁量と違法性判断の基準を示す。債務者の不履行という帰責性を重視し、執行吏に過剰な保護義務を課さない実務的指針となる。
事件番号: 昭和39(オ)532 / 裁判年月日: 昭和41年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務員の職務執行上の行為について、法令の解釈に複数の有力な説があり実務も分かれている状況下で、当該公務員が特定の説に従い誠実に行動した場合には、国家賠償法1条1項の「過失」を否定できる。 第1 事案の概要:債務者が仮処分命令の条件(現状維持)に違反して建物の現状を変更したため、執行吏代理が債務者を…