使用貸借の終了した敷地上に建築された原判示仮店舗の周囲に、右敷地所有者(終了前の敷地使用貸主)が仮店舗所有者(終了前の敷地使用借主)の承諾を得ないで、板囲を設置した場合であつても、右仮店舗所有者が右板囲を実力をもつて撤去することは、同人が原判示の経緯で原判示旧店舗に復帰してすでに飲食営業を再開している等原判示の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、私力行使の許される限界をこえるものと解するのが相当である。
私力の行使が許されないとされた事例。
民法709条,民法200条1項
判旨
自力救済(私力行使)は原則として禁止されるが、法律上の手続では現状維持が不可能又は著しく困難な緊急やむを得ない事情がある場合に限り、必要最小限の範囲で例外的に許容される。
問題の所在(論点)
権利を侵害された者が、公的公権力の発動を待たずに自らの実力で権利を回復する「自力救済(私力行使)」が、民法上の不法行為(709条)の違法性を阻却するか。その許容要件が問題となる。
規範
私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、①法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、②その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される。
重要事実
上告人は、相手方が設置した本件板囲を、法律に定められた手続によらずに、実力をもって撤去・破壊した。上告人は、この私力行使が正当なものであるとして、不法行為責任を否定するよう求めて上告した。
あてはめ
本件における事実関係(詳細は判決文からは不明)に照らせば、法律に定められた手続により板囲を撤去すべき状況であり、自力救済を認めなければ現状維持が困難になるような「緊急の事情」があったとは認められない。したがって、実力による撤去破壊は、私力行使が許される厳格な限界を超えるものといえる。
結論
上告人の行為は、例外的に許容される私力行使の範囲を逸脱しており、不法行為責任を免れない(本件上告は棄却)。
実務上の射程
自力救済禁止の原則を前提としつつ、例外的な許容要件を明確化したリーディングケースである。答案上は、不法行為の違法性阻却事由として論じる際、本判例の示す「緊急やむを得ない特別の事情」と「必要の限度」という2要件を厳格に検討すべきである。
事件番号: 昭和46(オ)267 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
仮登記担保権者が予約完結権を行使して目的不動産の引渡を受けるとともに、債務者との特約に基づき右不動産による旅館の営業権をその施設、器具ともども引渡を受けたなど判示事情のもとでは、債権者が目的不動産を換価して清算するまでこれを使用して旅館営業を継続しても右不動産に対する債務者の所有権を侵害するものではない。
事件番号: 昭和45(あ)1358 / 裁判年月日: 昭和46年7月30日 / 結論: 棄却
自救行為の主張は、刑訴法三三五条二項の主張にあたる。