直接請求の署名簿そのものの効力を争うについても、地方自治法第二五五条の四の適用があり、同法第七四条の二の規定によつてのみ争訟を提起することができる。
直接請求の署名簿そのものの効力を争うについて地方自治法第二五五条の四の適用の有無。
地方自治法255条の4,地方自治法74条の2
判旨
直接請求の署名簿自体の無効を争う訴訟は、地方自治法74条の2に定める署名の効力に関する争訟に包含され、同法255条の4により、同法が定める出訴期間等の制限を排他的に受ける。
問題の所在(論点)
直接請求の署名簿自体の無効を争う訴えが、地方自治法74条の2に定める署名の効力に関する争訟に含まれるか。また、同法255条の4の規定により、同法所定の出訴期間等の制限が排他的に適用されるか。
規範
地方自治法74条の2に規定する署名の効力に関する争訟は、個々の署名の効力のみならず、署名簿そのものの無効を争う場合も包含する。なぜなら、署名簿全体の効力を争うことは全署名の効力を争うことに帰着し、同条の手続きで複数の署名を同時に争うことに支障はないからである。したがって、同法255条の4の趣旨に鑑み、署名簿の効力を争う場合は、同法74条の2が定める争訟期間及び管轄の規定によってのみ争うことができる。
重要事実
基山町における直接請求に関し、上告人らは署名簿自体の無効および選挙管理委員会の決定の無効を主張して、係属中の本訴に当事者参加を申し立てた。しかし、この申し立ては地方自治法74条の2第8項が定める「決定のあった日から14日以内」という出訴期間を徒過してなされたものであった。上告人らは、署名簿自体の無効を争う場合は同法の期間制限を受けず、民事訴訟法等の一般原則により参加し得ると主張して上告した。
事件番号: 昭和28(オ)855 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
一 選挙人名簿に記載されている者は、その後選挙権を失つても直接請求の署名簿に署名することができる。 二 署名の意味が不明のままで直接請求の署名簿にした署名であつても、地方自治法施行令第九五条で規定する時期までに、同条に規定する方法によつて取り消されないかぎり有効である。
あてはめ
上告人らは署名簿自体の無効を主張するが、これは全部の署名の効力を争うことに他ならず、性質上、地方自治法74条の2の争訟に含まれる。同法255条の4は、署名の効力に関する争訟につき同法の規定によらなければならない旨を定めている。記録上、上告人らによる参加の申立て(実質的な訴の提起)は、同法74条の2第8項の定める14日の不服申立期間を経過した後になされている。したがって、当該申立ては不適法といわざるを得ない。
結論
直接請求の署名簿に関する訴訟は、地方自治法74条の2の規定によってのみ提起できる。法定の出訴期間を経過した後の当事者参加の申立ては不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
地方自治法上の直接請求に関する争訟の排他的性格を明らかにした。署名簿全体の形式的な不備等を理由とする場合であっても、同法74条の2の枠組み(短期の出訴期間等)から逃れることはできないため、答案上は特別法による期間制限の遵守が厳格に求められる場面で引用すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)575 / 裁判年月日: 昭和35年12月2日 / 結論: 棄却
新市町村建設促進法第二七条による投票において「ハ」のみを記載した投票は賛否何れであるか不明であるから無効である。
事件番号: 昭和28(オ)1155 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】市町村長解職請求の署名について、請求要旨に多少の事実相違があっても、選挙人が解職の意思を持って署名した以上は詐欺による無効とはならず、また選挙管理委員会の署名有効性の決定は裁判所の司法審査に服する。 第1 事案の概要:上告人(町選挙管理委員会)に対し、町長の解職(リコール)請求がなされ、署名簿が提…
事件番号: 昭和37(オ)697 / 裁判年月日: 昭和37年12月26日 / 結論: 棄却
一 証明書を提出することができない理由記載欄に「証明者なし」と記載した選挙人自身が作成した疎明書と題する書面を提出しただけでは、公職選挙法施行令第五二条第三項の疎明があつたとはいえない。 二 不在者の投票用封筒の表面および裏面またはそのいずれかに公職選挙法施行令第五六条第六〇条所定事項の記載のない投票は、受理すべきでな…
事件番号: 昭和28(オ)18 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
一 地方公共団体の長の解職請求者名簿に部落民が部落会の決議により署名し、あるいは請求代表者またはその代理人が第三者を同伴して署名を集めたからといつて、それだけでその署名が無効であるとはいえない。 二 署名が詐偽または強迫に基くものであるかどうかについての市町村選挙管理委員会の認定については、裁判所はその当否を判断するこ…