当事者の一方が相手方に対し農地の耕作をさせることを約し、相手方がこれに関連して右農地の管理等に関し原判示のような金銭の支払いおよび労務の提供を約した(原判決理由参照)としても、それだけでは、当事者間に右農地を目的とする賃貸借契約が成立したとはいえない。
農地賃貸借契約の成立が否定された事例。
民法601条
判旨
民法601条に規定される賃貸借は、物の使用収益に対し「賃金(借賃)」を支払うことを要件とする。所有財産の管理等に関する労力や出費の提供は、賃貸借における賃金の支払とは認め難く、賃貸借以外の契約関係に該当する。
問題の所在(論点)
不動産の使用収益の対価として「所有者の財産管理に関する労力や出費の提供」がなされる場合、当該法律関係は民法601条の賃貸借にあたるか。
規範
賃貸借契約(民法601条)が成立するためには、賃貸人が物の使用・収益をさせることを約し、かつ、賃借人がその対価として「賃金」を支払うことを約する必要がある。使用収益の対価が、金銭その他の財産的価値を有する賃金といえるものでない場合には、賃貸借契約としての成立要件を欠くものと解すべきである。
重要事実
上告人の先代Dは、被上告人の先代Eに対し、本件土地の耕作を許容していた。原審は、この耕作関係について「Dの所有財産の管理その他についての労力や出費を対価とするもの」と認定した上で、一種の賃貸借にあたると判断し、被上告人が賃借権を相続により承継したと結論づけたため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
賃貸借における賃金は、使用収益の対価として支払われるべきものである。本件において、被上告人側が提供していたのは、地主であるDの所有財産管理に関する労力や出費であり、これらは通常の賃貸借における借賃の支払とはその性質を異にする。したがって、本件の耕作関係は賃貸借の成立要件である賃金の支払を伴うものとは認められず、他の系列の契約関係(混合契約や無名契約等)と解するのが相当である。
結論
本件耕作関係を賃貸借と解することはできず、賃借権の承継を前提とした原判決には法令の解釈を誤った違法がある。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
賃貸借の成立要件である「対価性(賃金)」の厳格な解釈を示す。労務提供や経費負担が対価となっている場合、それが直ちに民法上の賃貸借になるわけではなく、農地法等の特別法適用の有無を判断する際にも重要となる。答案上は、賃貸借と使用貸借、あるいは他の無名契約を区別する際のメルクマールとして利用する。
事件番号: 昭和36(オ)1385 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地明渡請求が権利の濫用に該当するか否かは、具体的な事案の諸事情を総合考慮して判断されるべきであり、本件においては権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)が占有する本件土地に対し、被上告人(原告)が土地の明渡しを求めて提訴した。これに対し、上告人は当該明渡請求が権利の濫用に該当…