明治二一年町村制の施行後、区の所有であつて当該区の部落民の入り会つていた入会地について、その後六五年間に、部落の統制が次第に当該区会の統制に移行し、区が従前の入会地の一部を処分し、全入会地を管理して使用収益方法を定め、部落民も異議なくこの方法に従つて当該土地の使用収益をするにいたり、また従前部落の入会権行使の統制機関であつた「春寄合」は区会に対する意見具申の機関になつた等慣行の変化があつた場合には、部落民が右土地につき有していた地役の性質を有する入会権は、漸次解体して消滅したと認めるのが相当である。
地役の性質を有する入会権が解体消滅したと認められた事例
民法294条
判旨
入会権は慣習によって発生し事実の上に成立する権利であるから、慣習の変化により入会集団の統制下での使用収益が行われなくなった場合には、解体消滅に帰する。本件では明治以降の管理体制の移行や利用形態の変容により、入会権が漸次解体消滅したと認められた。
問題の所在(論点)
社会経済情勢の変化に伴い入会地の管理・使用収益の実態が変容した場合において、慣習上の権利としての入会権(地役権の性質を有するもの)が消滅したといえるか。
規範
入会権は慣習によって発生し、事実の上に成立している権利である。したがって、社会経済状況の変化に伴う慣習の変化により、入会地上の使用収益が入会集団(部落等)の統制の下にあることをやめるに至った場合には、当該入会権は解体消滅したものと解するのが相当である。
重要事実
旧a村(後のa区)の住民らは、本件土地に対し入会権を有していた。しかし明治以降、a区会が土地の一部を神社に贈与し、当局の許可を得て立木を伐採売却するなど、処分・管理権を行使するようになった。住民による自由な薪炭採取は禁じられ、入山料の支払や区会の指定に基づく利用へと変化した。かつての統制機関であった「春寄合」も区会への意見具申機関へと変質し、約65年間にわたりこれらの状況に対して住民から異議が出ることはなかった。
あてはめ
徳川時代からの農村経済に不可欠であった入会権も、貨幣経済の発展等により変質・解体過程をたどるものである。本件では、a部落による自主的な統制からa区会による公的な統制へと移行し、使用収益の方法が一変している。入会権者による異議もなく、管理主体や利用ルールが全面的に書き換わった事実に照らせば、入会集団の統制による使用収益という入会権の本質的実態は失われており、昭和28年頃までに漸次解体消滅したといえる。
結論
入会権は消滅しており、住民側の回復請求は認められない。
実務上の射程
入会権の消滅原因として「放棄」という構成を採らず、慣習の変化による「解体消滅」という客観的な法理を示した点に意義がある。答案では、入会権の存否が争点となる場合に、管理・収益の実態が歴史的にどう変遷したかを事実認定し、集団的統制の有無から消滅を論じる際の規範として活用する。
事件番号: 昭和37(オ)1415 / 裁判年月日: 昭和39年11月17日 / 結論: 棄却
旧河川法(明治二九年法律第一七一号)第一八条の許可に基づく占用権者が長期にわたり占用許可の更新手続をすることなく放置し、占用許可に基づく使用収益権をすでに放棄していると認められるなど原判決の事実関係では、右占用権者は、同条に基づく占用権を有しないと解すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)745 / 裁判年月日: 昭和39年2月6日 / 結論: 棄却
立木法の適用を受けない立木の買受人がこれに明認方法を施さないうちにこれを伐採した場合、右買受人は、当然伐木の所有者となるけれども、立木当時既に明認方法の欠点を主張しうべき正当の利益を有した第三者に対する関係においては、伐木所有権をもつて対抗できない。