土地区画整理事業計画の決定は、その公告がなされた段階においても、抗告訴訟の対象とならないものと解すべきである。
土地区画整理事業計画の決定と抗告訴訟の対象
土地区画整理法66条,土地区画整理法6条,行政事件訴訟特例法1条
判旨
土地区画整理事業計画は、施行地区を特定し事業の基礎的事項を一般的・抽象的に決定する青写真にすぎず、特段の事情がない限り、行政事件訴訟法上の行政処分には当たらない。したがって、事業計画の公告がなされた段階でその無効確認を求めることは、争訟の成熟性ないし具体的事件性を欠き、許されない。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業計画の決定およびその公告は、行政事件訴訟法上の「行政処分」に該当し、抗告訴訟(無効確認訴訟)の対象となるか。また、その段階での出訴に「成熟性」が認められるか。
規範
行政庁の行為が抗告訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)に当たるというためには、その行為が直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められていることを要する。土地区画整理事業計画は、事業の基礎的事項を高度の裁量によって一般的・抽象的に決定する性質を有し、その自体では利害関係者の権利に具体的な変動を及ぼすものではないため、原則として処分性を欠く。
重要事実
東京都知事により土地区画整理事業計画が決定・公告され、さらに一部変更計画の認可・公告がなされた。施行地区内の土地所有者等である上告人らが、当該事業計画の無効確認を求めて出訴した。上告人の一部(A1、A2)については、既に仮換地の指定および建築物等の移転通知を受けていたが、原審は、事業計画自体の段階では直接具体的な権利変動を受けていないとして、訴えを不適法と判断した。
事件番号: 平成3(行ツ)208 / 裁判年月日: 平成4年10月6日 / 結論: 棄却
土地区画整理事業計画の決定は、その公告がされた段階においても、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 (補足意見がある。)
あてはめ
土地区画整理事業計画は、施行地区の特定や公共施設の設置場所等を定める「青写真」としての性質にとどまり、特定個人に向けられた具体的な処分とは異なる。公告に伴う土地の形質変更等の制限(法76条1項)や権利申告(法85条)は、事業の円滑な遂行のための「附随的な効果」にすぎず、事業計画そのものの直接の効果とはいえない。また、将来的に仮換地指定や換地処分等の具体的な権利侵害が生じた段階でそれらを争えば救済として十分であり、計画段階での出訴を認めなければ権利保護に欠けるとはいえない。よって、本件事業計画の公告段階では、具体的な権利変動を伴わないため、争訟の成熟性を欠く。
結論
土地区画整理事業計画の決定・公告は、無効確認訴訟の対象となる行政処分には該当しない。したがって、本件訴えは不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
本判決は、長らく土地区画整理事業計画の処分性を否定するリーディングケースであったが、後の最判平成20年9月10日(浜松市土地区画整理事業事件)により変更された点に注意が必要である。現在の実務・司法試験答案上では、本判決の「青写真」論を否定し、事業計画の決定によって権利制限が実質的に強制されることから処分性を肯定する平成20年判決の枠組みを論ずるのが標準的である。ただし、昭和41年当時の判断枠組み(成熟性論)を理解するための比較対象として重要である。
事件番号: 昭和32(オ)141 / 裁判年月日: 昭和33年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地買収計画の樹立後に法定期間継続して行われた公告は、それが計画の公表を目的とするものである以上、予想公告の性質を帯びていたとしても当然に無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に基づく公告について、その内容が計画の確定前になされた「予想公告」にすぎないと主張し、買収処分の無効…
事件番号: 昭和57(行ツ)128 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
一 土地区画整理組合の設立認可は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 二 土地区画整理組合の事業施行地区内の宅地の所有者は、右事業施行に伴う処分を受けるおそれのあるときは、同組合の設立認可処分の無効確認訴訟につき原告適格を有する。 三 甲が、乙を被告とする丙土地区画整理組合の設立認可処分の無効確認請求と同組合を被告…
事件番号: 昭和39(行ツ)104 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第三条第一項第三号の超過面積算定の基礎となるべき小作地は、地主がその住所のある市町村の区域内において所有する小作地にのみ限られ、隣接市町村の区域内において所有する小作地はこれに含まれない。