県教育委員会のした小学校教員の期限付任用も、(イ)同委員会としては、定年退職の制度がないため、高齢者を罷免し人事の刷新を図るには勧奨退職の方法を活用するよりほかなく、この方法の円滑な運用を期するうえに期限付任用を行う必要があつたこと、(ロ)本人としても、かかる任用を諒承し、再度期間の更新を受けるにあたり年度末には自発的に退職する旨の誓約書を差し入れていたこと、(ハ)地方公務員法の職員任用に関する規定の適用をみるにいたつたのが、再度の更新期間中であつたことを等の事情の下では、地方公務員法の右規定施行後においても、違法とはいえない。
小学校教員の期限付任用が適法とされた事例。
地方公務員法22条
判旨
地方公務員法上、職員の任用は無期限を原則とするが、期限付任用を必要とする特段の事由が存在し、かつ職員の身分保障の趣旨に反しない場合には、法律の明文がなくても許容される。
問題の所在(論点)
法律に明文の規定がない場合において、地方公務員の期限付任用が認められるか。地方公務員法1条、13条、27条、28条等の身分保障規定との関係が問題となる。
規範
地方公務員法が条件付採用制度や分限・懲戒免職の事由を明定し、臨時的任用の要件・期間を限定していることに鑑みれば、職員の任用は無期限とするのが法の建前である。しかし、この建前は職員の身分を保障し職務に専念させる趣旨であるから、①期限付任用を必要とする特段の事由が存し、かつ②右の趣旨(身分保障の趣旨)に反しない場合には、法律に明文がなくても期限付任用は許される。
重要事実
山形県では教員の定年制がなく、人事刷新のための勧奨退職を円滑に進めるため、生活に窮する退職者を1年期限で助教諭等に再任用する慣行があった。小学校教諭を30数年務めた上告人は、退職勧告に応じる際、生活擁護のため1年期限の助教諭として採用される了解を得て退職し、その後期限付任用された。期間更新を繰り返した後、教育委員会から更新拒絶の通告を受けたが、上告人は1年限りの勤務を懇請し「自発的に退職する」旨の誓約書を差し入れて再度更新を受けた。その更新期間中に地方公務員法の任用規定が適用されるに至った。
あてはめ
本件では、人事刷新に伴う勧奨退職の円滑な運用および退職者の生活保護という背景があり、再任用にあたって期限を付す「特段の事由」が認められる(①充足)。また、上告人は自ら了解して退職・期限付採用の道を選び、さらに自ら1年限りの勤務を懇請して誓約書を差し入れている。このような経緯や、適用開始前は身分保障を有する地位になかったことを勘案すれば、期限付任用を維持しても職員の身分を不当に害するものではなく、身分保障の趣旨に反しない(②充足)。
結論
本件の期限付任用は適法であり、期間満了による退職の効果を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
地方公務員の任用における「原則無期限・例外期限付」の枠組みを示した重要判例である。法律に根拠がない場合でも「特段の事由」と「身分保障の趣旨への不適合」という二要素で適法性を判断する手法は、現代の非正規職員や再任用制度の議論においても参照される。答案では、任用行為の法的性質(行政処分性)を前提としつつ、内容の適法性を検討する局面で使用する。
事件番号: 昭和38(オ)413 / 裁判年月日: 昭和40年4月22日 / 結論: 棄却
臨時免許状を有する公立学校の教員は、その免許状の失効により地方公務員たる身分を失う。