「有限会社D」から営業を譲り受けた者が「合資会社E」の商号を使用するときは、商法第二六条第一項の商号を続用する場合にあたらない。
商法第二六条第一項の商号の続用にあたらないとされた事例
商法26条1項
判旨
営業譲受人が、譲渡人の商号に「新」という字句を付加した商号を用いることは、特段の事情がない限り、会社法22条1項(旧商法26条1項)にいう商号の続用には当たらない。
問題の所在(論点)
営業譲受人が譲渡人の商号の主体部分を共通にしつつ、冒頭に「新」という字句を付加して用いることが、会社法22条1項(旧商法26条1項)にいう「その商号を引き続き使用する場合」に該当するか。
規範
会社法22条1項(旧商法26条1項)の商号続用による責任は、同一の商号を継続して使用することで、債務も承継されたと信じた第三者を保護する趣旨である。いわゆる第二会社を設立して営業譲渡を受けた際、従来の商号に「新」を付加する場合、取引の社会通念上、当該字句は継承を意味するものではなく、むしろ旧会社の債務を承継しないことを示すものと解される。したがって、このような商号の変更は原則として商号の続用に当たらない。
重要事実
訴外会社である有限会社D(旧会社)が解散し、営業全部を譲り受ける形で上告人である合資会社E(新会社)が設立された。新会社の商号は、旧会社の商号である「D」に「新」の字句を冠し、会社の種類を合資会社に変更したものであった。被上告人は、旧会社に対する手形債権に基づき、商号を続用しているとして、新会社に対して支払を求めた。
あてはめ
上告人の商号「合資会社E」は、譲渡人である「有限会社D」と会社の種類が異なるだけでなく、その主体部分の前に「新」という字句を付加している。この「新」という表現は、社会通念上、旧会社とは別主体であり債務を承継しないことを明示する機能を有する。したがって、外観上、営業主体が同一であると誤認させるような商号の継続使用が認められるとはいえず、同条の責任を負わせる基礎を欠く。
結論
上告人の商号使用は「商号の続用」に該当しない。したがって、上告人は旧会社の債務について支払責任を負わず、被上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は、商号の「同一性」の判断基準として、単なる字句の類似性だけでなく、取引上の社会通念や債務承継の有無に関する表示機能を重視している。答案上、会社法22条1項の「続用」の有無を検討する際、「新」や「第二」といった字句が付加されている場合には、本判決の法理を引用し、債務承継の拒絶を示すものとして否定的に解釈する論拠となる。
事件番号: 昭和30(オ)522 / 裁判年月日: 昭和32年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形振出人の表示に会社の変更登記前の旧商号が使用された場合であっても、その表示によって現在の会社との同一性が明らかであれば、有効な手形振出としての効力を生ずる。 第1 事案の概要:上告会社は、商号変更の登記を行う前の旧商号を「A化学工業株式会社」としていた。本件手形の振出人欄には、変更後の現商号で…