主たる建物の登記部分のみが無効である場合は、その部分のみの抹消を許すべきであつて、附属建物を含めた全部の登記の抹消を許すべきではない。
主たる建物の登記部分のみが無効である場合と附属建物を含めた全部の登記の抹消の許否。
民法177条,不動産登記法
判旨
主たる建物と附属建物が一の登記用紙に登記されている場合でも、主たる建物の保存登記が無効であるときは、分割登記を経た上で主たる建物のみの抹消を命ずべきであり、当然に附属建物の登記まで抹消すべきではない。
問題の所在(論点)
主たる建物と附属建物が一括して登記されている場合において、主たる建物の登記が無効であるとき、独立の所有権が認められる附属建物の登記についても当然に抹消を命ずることができるか。
規範
不動産登記法上、主たる建物と附属建物の分割登記手続が認められている以上、両者の登記上の処遇を常に合一にすべき根拠はない。主たる建物の所有権保存登記が無効である場合、主たる建物と附属建物を分割する登記手続を経た上で、無効な主たる建物の部分のみの抹消を命ずれば足りる。
重要事実
被上告人(原告)は訴外Dとの間で土地及び甲建物の売買契約を締結したが、代金完済まで所有権を移転しない旨を合意していた。その後、上告人(被告)は甲建物に増築を行い、当該増築部分(乙建物)を主たる建物、既存の附属建物二棟をその附属建物として一括して所有権保存登記を経由した。原審は、増築部分は甲建物の構成部分となり独立性がないため、主たる建物の登記は無効であるとし、これに従従する附属建物の登記も当然に抹消されるべきと判断した。
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…
あてはめ
本件増築部分は、甲建物の構成部分となっており独立した所有権の客体とはならない(民法242条)。そのため、上告人名義の主たる建物の保存登記は実体法上の権利を欠き無効である。一方で、附属建物二棟は独立の建物であり、上告人の所有に帰属すると認定されている。不動産登記法上、主たる建物と附属建物は分割登記が可能であるから、主たる建物の登記が無効であっても、分割登記の手続を行えば附属建物の登記を維持することは可能である。したがって、附属建物の登記まで当然に無効として抹消を命ずることはできない。
結論
主たる建物について分割登記をした上で、その主たる建物部分のみの所有権保存登記の抹消登記手続をすべきである。附属建物部分の抹消請求は棄却される。
実務上の射程
登記上の主従関係(主たる建物と附属建物)が実体法上の所有権の帰属を直ちに拘束しないことを示した事例。登記請求訴訟の判決主文において、分割登記を条件とした一部抹消の構成をとる際の実務的指針となる。
事件番号: 昭和34(オ)470 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未登記不動産の所有者がこれを譲渡した後でも、登記を備えない限り譲渡人は完全な無権利者とはならない。したがって、譲渡人名義でなされた保存登記およびそれを前提とする仮差押登記は、対抗関係の法理により有効である。 第1 事案の概要:訴外Dは、自己の所有する本件建物を未登記のまま上告人Aに売り渡した。その…
事件番号: 昭和35(オ)276 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者の主張する契約関係と裁判所が認定した契約関係との間に社会観念上の同一性が認められる場合、裁判所が当該認定に基づき判決しても処分権主義に反しない。また、主たる賃貸借契約が終了した場合、これに付随し運命を共にする趣旨の従たる転貸借契約も当然に終了する。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は、建…
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
事件番号: 昭和27(オ)295 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
抵当権実行による競売手続において競落により不動産を取得した者およびその者から右不動産を買受けた者を共同被告として右不動産の所有者として抵当権の効力を否定する者から各所有権取得登記の抹消を求める訴は、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合に当らない。