一 発起人が会社の成立を条件としてなした法律行為のうち、単純な債務引受は財産引受にあたらないが、積極消極両財産を含む営業財産を一括して譲り受ける契約は、財産引受にあたる。 二 発起人は、会社設立自体に必要な行為のほかは、開業準備行為といえども原則としてこれをなしえず、ただ、原始定款に記載されその他法定要件を充した財産引受のみを例外的になしうるものと解すべきである。
一 債務引受と財産引受との関係 二 開業準備行為と発起人の権限
商法第168条1項6号
判旨
営業財産を一括して譲り受ける際の債務引受は、実質的に財産引受に該当し、定款記載等の厳格な手続を要する。また、不当利得における利得者の運用利益は、損失者が当然取得したであろう範囲において返還義務の対象となる。
問題の所在(論点)
1. 定款に記載のない債務引受が、会社法上の「財産引受(変態設立事項)」として無効となるか。2. 不当利得における返還範囲に、利得者が得た運用利益(利息相当分)が含まれるか。
規範
1. 積極・消極両財産を含む営業財産を一括して譲り受ける契約において、消極財産(債務)が積極財産に対して対価的意義を持つ場合は、商法(現行会社法28条2号)にいう「財産引受」に該当する。2. 不当利得の返還範囲について、受益者の行為により得られた運用利益は、受益者の行為が介在せずとも損失者が当然取得したであろうと認められる範囲において、損失者の「損失」となり、返還義務の対象に含まれる。
重要事実
会社設立に際し、発起人が将来成立する会社を債務者として、営業財産を一括して譲り受ける旨の契約を締結し、債務引受を行った。しかし、当該事項は原始定款に記載されていなかった。その後、会社は不当に利得した弁済金を運営資金として運用し、商事法定利率相当の運用利益を得ていたため、破産管財人が不当利得返還請求を行った。
あてはめ
1. 本件債務引受は単なる債務の引受けではなく、営業財産の一括譲受に伴うものであり、消極財産が積極財産の対価としての性格を有するため、財産引受に該当する。原始定款に記載がない以上、会社に対して効力を生じない。2. 上告人は銀行業者であり、利得した金を運営資金として運用し利益を得ている。この利益は、社会観念上、受益者の行為がなくても損失者が当然取得し得た範囲内(商事法定利率等)にあると認められるため、損失との間に因果関係が認められ、返還すべき利得に該当する。
結論
1. 定款に記載のない本件債務引受は会社に対して効力を生じない。2. 受益者は、善意・悪意を問わず、損失者が当然取得したであろう範囲の運用利益を返還する義務を負う。
実務上の射程
会社法分野では財産引受の潜脱防止(資本充実)の観点から重要。民法分野では、不当利得における「損失」の概念を柔軟に解釈し、利得者の運用利益の還元を認める際の主要な根拠となる。答案上は、利息相当額の請求が認められるかの局面で、損失の認定(当然取得したであろう範囲)として引用する。
事件番号: 昭和31(オ)25 / 裁判年月日: 昭和33年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】会社の目的の範囲は、定款に明示された目的に限らず、その遂行に必要な行為を含む。また、取締役が会社を代表して行う第三者の債務への保証は、取締役個人が法律上の利益を得るものでない限り、利益相反取引には当たらない。 第1 事案の概要:破産会社(資本金300万円)の取締役Fは、会社が銀行から運転資金の融資…
事件番号: 昭和35(オ)115 / 裁判年月日: 昭和37年11月1日 / 結論: 棄却
利息制限法第二条により元本の支払に充当されたものとみなされた金員相当額を再度支払つた場合は、借主が同条の趣旨を知つていたものでない限り、その返還を請求する権利が生ずる。