判旨
無権限者から他人の所有物を譲り受けた者が、その譲渡に権限がないことを知っていた場合、その取得は法律上の原因がない悪意の不当利得となり、利得当時の価額相当額及び利息の返還義務を負う。
問題の所在(論点)
無権限者から他人の所有物を譲り受けた悪意の譲受人が負う不当利得返還義務(民法703条、704条)の成否及びその返還範囲が問題となる。
規範
無権限者による他人の権利の処分につき、譲受人がその無権限の事実を知っていた(悪意であった)場合には、当該処分によって得た利益は法律上の原因を欠く不当利得となる。この場合、返還すべき範囲は、悪意の受益者として、利得した当時の客観的な価額及びこれに対する利息となる(民法703条、704条)。
重要事実
訴外D及びEは、権限がないにもかかわらず、違約損害金債務の代物弁済として、被上告人(原告)所有の大工小屋1棟及び松立木2本を上告人(被告)に譲渡した。上告人は、譲受当時においてDらに当該物件を処分する権限がないことを知っていた。その後、上告人はこれらの物件を処分した。
あてはめ
上告人は、Dらに処分権限がないことを知りながら本件物件を譲り受けており、法律上の原因なく不法に利益を取得した「悪意の受益者」にあたる。したがって、取得当時の物件の客観的価額相当額を利得したものと解される。また、無権限者が恣意的に定めた違約損害金の額は、客観的な利得返還義務の範囲を画するものではなく、返還額の算定において考慮する必要はない。
結論
上告人は悪意の受益者として、代物弁済当時の価額相当額及びこれに対する利息を返還する義務を負う。
実務上の射程
他人の物の不法占有や無権限受領における不当利得の基本的事案である。悪意の受益者の返還範囲が「利得当時の価額」を基準とすることを明示しており、無権限者間の合意(本件では違約金額)が返還範囲に影響しない点に実務上の意義がある。
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