借地法第一〇条により建物の買取を請求した者が、建物の買取代金の支払を受けるまで該建物の引渡を拒み、これを占有することによつて敷地の占有を継続する場合には、右占有がもつぱら右同時履行の抗弁権行使のみを目的とするときは格別、これを自から使用しまたは第三者に使用せしめているときは、敷地の賃料相当額を不当利得として返還すべき義務がある。
借地法第一〇条の買取請求権行使後における敷地占有と不当利得の成否。
借地法10条,民法703条,民法533条
判旨
借地上の建物の買取代金の支払を受けるまで建物及び敷地を占有する者は、建物の引渡を拒むだけでなく自ら使用等をしている場合には、敷地の賃料相当額を不当利得として返還する義務を負う。
問題の所在(論点)
建物買取請求権を行使した借地権者が、代金支払との同時履行の抗弁に基づき建物を占有し、かつこれを自ら使用している場合に、敷地の利用について民法703条の不当利得返還義務を負うか。
規範
借地法10条に基づく建物買取請求権を行使した者が、代金支払との同時履行の抗弁に基づき建物を占有し、敷地の占有を継続する場合、その占有が専ら抗弁権の行使のみを目的とするものではなく、自ら建物を使用し、又は賃貸等により第三者に使用させているときは、法律上の原因なく敷地利用による利益を得ているといえる。したがって、当該占有者は敷地の賃料相当額を不当利得として返還すべき義務を負う。
重要事実
上告人は、借地法10条により建物買取請求権を行使した。その後、上告人は建物の買取代金の支払いを受けるまでの間、同時履行の抗弁権に基づき、当該建物の引渡しを拒んで占有を継続し、かつ、その建物を自ら使用していた。これに対し、土地所有者側が敷地の賃料相当額の不当利得返還を求めた事案である。
事件番号: 昭和39(オ)150 / 裁判年月日: 昭和40年12月17日 / 結論: 棄却
所有者甲から農地を買い受ける旨契約して代金を支払つた乙がいまだ右による所有権移転につき県知事の許可を受けないうちに、第三者丙において、右農地買受の事実がないのに同人名義に所有権移転の県知事の許可および登記を経たうえ、右農地を占有耕作するに至つたため、乙としては、もはや右農地の所有権の移転を売主甲から受けることが至難とな…
あてはめ
本件において、上告人は建物買取請求権を行使した後、建物の買取代金が支払われるまで建物の引渡しを拒み、占有を継続している。しかし、上告人が本件建物を自ら使用していることは当事者間に争いがない。このように建物を自ら使用して収益を上げている以上、単なる同時履行の抗弁権の行使という留置的な目的を超えて、敷地を排他的に利用し利益を享受しているといえる。そのため、土地所有者の損失において賃料相当額の利得を得ていると判断される。
結論
上告人は、建物を自ら使用している以上、本件土地の賃料相当額について不当利得として返還すべき義務を負う。
実務上の射程
同時履行の抗弁権や留置権(民法295条等)に基づき他人の物を合法的に占有している場合であっても、その物を「使用・収益」して実質的な利益を得ている場合には、不当利得(703条)が成立するという枠組みを借地法下の建物買取請求(現・借地借家法13条)の場面で確認したものである。
事件番号: 昭和29(オ)678 / 裁判年月日: 昭和31年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無権限者から他人の所有物を譲り受けた者が、その譲渡に権限がないことを知っていた場合、その取得は法律上の原因がない悪意の不当利得となり、利得当時の価額相当額及び利息の返還義務を負う。 第1 事案の概要:訴外D及びEは、権限がないにもかかわらず、違約損害金債務の代物弁済として、被上告人(原告)所有の大…