出資者が隠れた事業者として事業に参加しその利益の分配を受ける意思を有せず、金銭を会社に利用させその対価として利息を享受する意思を持つていたに過ぎず、このことが、原判決認定の事情のもとに客観的にも認められる場合は、事業者と出資者との契約は、所得税法第一条第二項第三号にいう「匿名組合契約およびこれに準ずる契約」にあたらない。
所得税法第一条第二項第三号の「匿名組合契約およびこれに準ずる契約で命令で定めるもの」にあたらないとされた事例。
所得税法1条2項3号,所得税法施行規則1条
判旨
所得税法上の「匿名組合契約に準ずる契約」とは、商法上の匿名組合契約に類似し、出資者が隠れた事業者として事業に参加し利益配当を受ける意思を有することを要し、客観的事実に基づき判断すべきである。
問題の所在(論点)
当事者が相手方の営業のために出資し、利益分配を受ける形式であっても、商法上の匿名組合契約としての実態を欠く場合に、所得税法上の「匿名組合契約に準ずる契約」と解することができるか。
規範
「匿名組合契約に準ずる契約」(所得税法)に該当するためには、商法上の匿名組合契約に類似する実態を備えていることを要する。具体的には、出資者が単に金銭を利用させて対価を得るだけでなく、隠れた事業者として事業に参加し、その利益の配当を受ける意思を有することを要し、その判断は出資者の主観的意図のみならず、客観的事実を総合して判断すべきである。
重要事実
会社が10人以上の出資者から資金を調達した契約について、所得税法上の匿名組合契約に準ずるものとして課税されるかが争われた。会社は出資と引換えに元利合計額の約束手形を交付し、期間は3ヶ月から1年と短期であった。営業案内では「元金」「利息」と表示し、決算書の提示もなく、帳簿上も「借入金」「支払利息」として処理されていた。
事件番号: 昭和36(オ)1254 / 裁判年月日: 昭和37年10月2日 / 結論: 棄却
匿名組合契約の形式をとり、多くの人から資金を集めた場合にも、出資者が事業に参加する意思等も全くない場合は、右契約を、「匿名組合契約及びこれに準ずる契約」にあたらない。
あてはめ
本件では、出資者は金銭を利用させる対価として利息を享受する意思に留まり、隠れた事業者として事業に参加する意思があったとは認められない。客観的にも、約束手形の交付による元本保証的運用、営業案内の文言、決算報告の欠如、会社の会計処理等に鑑みれば、消費貸借契約の実態を有しており、匿名組合契約に類似する点はない。
結論
本件契約は、客観的実態において匿名組合契約に類似せず、「匿名組合契約に準ずる契約」には該当しない。したがって、利息所得としての性質を有し、匿名組合利益としての課税対象とはならない。
実務上の射程
契約の法的性質の決定における「表示よりも実態」を重視する判断枠組みを示す。特に匿名組合と消費貸借の区別において、リスク負担の有無(元本保証の有無)や事業参与性の客観的事実が重要視されるため、税務上の所得区分を論ずる際の指針となる。
事件番号: 昭和35(オ)54 / 裁判年月日: 昭和35年10月7日 / 結論: 棄却
一 いわゆる蛸配当、株主平等の原則に反する配当等のように、商法上不適法な配当であつても、所得税法上の利益配当のうちに含まれる。 二 いわゆる株主相互金融会社(原判決参照)における株主優待金は所得税法上の利益配当にあたらない。
事件番号: 昭和35(オ)49 / 裁判年月日: 昭和35年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他名義の預金の存在や、所得率が著しく低いこと等は、所得税法上の青色申告承認の取消事由に該当し、当該取消処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は青色申告の承認を受けていたが、税務署長(被上告人)は、DおよびEという他人の名義を用いた別途預金が存在していること、および所得率が実態に比して著しく過…
事件番号: 昭和54(行ツ)35 / 裁判年月日: 昭和58年12月6日 / 結論: 破棄差戻
従業員が満五五歳又は勤続満一〇年に達したときに定年となる旨の就業規則の定め及び退職金規程に基づき、勤続満一〇年に達したことを理由として退職金名義の金員の支給を受けた従業員の大部分が、その役職、給与、有給休暇の日数の算定等の労働条件に変化がないまま引き続き勤務しているなど判示のような事実関係があるときは、右就業規則の客観…