教育委員会法(昭和二三年法律第一七〇号)第三四条第四項但書にいう「急施を要する場合」とは付議すべき事件の性質が、同条本文に定める三日の期間経過後に議決するのでは議決の実効を収め得ない程度に緊急性を有する場合にかぎると解すべきではなく、会議の招集権者は、この点の判断についてはその当時における客観的情勢その他諸般の事情から、その事件が行政措置上急施を要するかどうか等の点をも考慮し、その裁量判断によりこれを決することができるものと解すべきである。
教育委員会法(昭和二三年法律第一七〇号)第三四条第四項但書にいう「急施を要する場合」と会議招集権者の裁量権。
教育委員会法(昭和23年法律170号)34条
判旨
教育委員会法34条4項但書の「急施を要する場合」とは、付議事件の性質からのみ判断されるのではなく、当時の客観的情勢や行政上の必要性を考慮した招集権者の裁量判断が認められる。
問題の所在(論点)
教育委員会法(当時)34条4項但書にいう、3日前までの告示を不要とする「急施を要する場合」の意義、および招集権者による判断の裁量の有無。
規範
教育委員会法34条4項但書の「急施を要する場合」に該当するか否かは、単に付議すべき事件の性質・内容から客観的に緊急性が認められる場合に限られない。会議の招集権者において、その当時における客観的情勢その他諸般の事情から、当該事件が行政措置上急施を要するか否かを考慮し、その裁量により判断することができると解するのが相当である。
重要事実
京都市教育委員会は、転補命令を拒否し旧任校に留まる教員らに対し、懲戒免職処分を議決するため臨時会を開催した。同法34条3項・4項は、会議の招集には3日前までの告示を要すると規定していたが、本件では委員長が当日午後2時半に宣言し、午後3時に開会するという極めて短期間の告示で招集された。当時、教員の命令拒否に対し世論の批判が強まる一方、支援団体による反対闘争も激化し、事態の収拾が急務であった。また、委員1名の帰国を待ってようやく意思決定が可能な体制が整ったという背景があった。
あてはめ
本件では、転補命令拒否を巡り世論の非難や支援団体の闘争が激化しており、事態の収拾に緊急性が生じていた。また、委員の欠員(海外渡航)や意見の対立により、帰国直後まで有効な意思決定が困難であった事情も認められる。このような緊迫した客観的情勢の下では、行政措置上の必要性から、招集権者が「急施を要する場合」に当たると判断し、法定の告示期間を置かずに招集したとしても、直ちに裁量権の逸脱・濫用があったとはいえない。原審は事件の性質のみから緊急性を否定したが、当時の具体的な諸般の事情を審理すべきである。
結論
招集権者が客観的情勢に基づき急施を要すると判断した場合には、3日前の告示を経ない招集手続も適法となり得る。したがって、裁量の範囲内かを確認せずに直ちに違法とした原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
行政庁の内部手続(招集手続)における要件解釈において、行政上の必要性や政治的・社会的状況を考慮した判断の裁量を認める際の論拠となる。手続規定の解釈に柔軟性を持たせる判例として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)574 / 裁判年月日: 昭和33年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】郵便配達組織を通じて他の郵便物とともに名宛人に配布された文書は、客観的に郵便物としての性質を有する。また、組合の決定に基づく行為であっても、違法な郵便物配布等は正当な組合活動とは認められず、これに対する懲戒処分は裁量権の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:郵便局員である上告人が、組合の決定に基…
事件番号: 令和3(行ヒ)164 / 裁判年月日: 令和4年6月14日 / 結論: 破棄差戻
地方公共団体の職員が、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分の停職期間中に、上記暴行等の一部についての事情を知っていた同僚及び上記暴行の被害者の1人である部下に対して行った各働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分を受けた場合において、次の(1)、(2)など判示の事情の下においては、上記処分が裁量権の範…
事件番号: 昭和29(オ)973 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: その他
公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。