甲、乙、丙の三会社が営業を廃止し、新たに丁会社が設立されて旧三会社と同一の中央卸売市場における水産物等の卸売業務を開始するという趣旨の書面を丁会社が旧三会社の取引先に送付しても、商法第二八条にいう債務引受の広告をしたことにあたらない。
商法第二八条の広告にあたらない事例。
商法28条
判旨
営業廃止に伴い設立された新会社による取引先への挨拶状が、旧会社の債務を当然に承継または引受ける意思を表示したものとは認められない場合には、新会社は旧会社の債務を負わない。
問題の所在(論点)
旧会社の営業廃止と新会社の設立に伴い、新会社が取引先へ送付した業務開始の挨拶状が、旧会社の債務を引き受ける旨の意思表示(債務引受け)に該当するか。
規範
特定の債務を承継・引受けしたと認められるためには、契約や単独行為による意思表示が必要であり、営業主体の変更を通知する挨拶状等の送付のみをもって、当然に債務承継の合意が成立したとは解されない。
重要事実
D・E・Fの3社(旧会社)が営業を廃止し、新たに被上告会社が設立された。被上告会社は旧会社と同一の中央卸売市場において水産物等の卸売業務を開始した。その際、被上告会社は取引先に対し、旧会社が営業を廃止し新会社が業務を開始する旨の挨拶状(甲第三号証)を送付した。上告人は、この経緯により旧会社の債務が被上告会社に承継されたと主張して、その支払いを求めた。
あてはめ
本件の挨拶状は、旧会社が営業を廃止し、被上告会社が同一の市場で同一の業務を開始するという客観的な事実を取引先に知らせる「単なる挨拶状」としての性格を有するに過ぎない。内容を精査しても、旧三会社の債務を被上告会社において承継・引受けする旨の具体的な文言や、そのような法的効果を発生させる意思表示は含まれていない。したがって、当該書面の送付をもって債務引受けの合意が成立したと認めることはできない。
結論
被上告会社が旧会社の債務を引き受けたとは認められないため、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
会社分割や事業譲渡に伴う債務承継の成否が問題となる場面において、特段の合意や商法上の類推適用(商法17条・18条等)が認められない限り、単なる事実関係の通知のみで債務承継を肯定することはできないという限界を示す。実務上は、書面の文言解釈において、単なる事実の通知(観念の通知)と意思表示を厳格に区別する際の根拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)977 / 裁判年月日: 昭和35年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟目的での債権譲渡(信託法10条、旧11条)の禁止規定に違反するか否かは、譲渡の経緯、対価の有無、譲受人の意図などの諸事情を総合して判断されるべきである。 第1 事案の概要:債権者Dは、債務者である上告人らに対し金員を貸与し、内容証明郵便で支払を請求した。その後、Dは被上告人に対し当該債権を譲渡…