甲が乙を雇傭している期間内に限り、乙が甲に対し家屋を賃貸する約定は、借家法第六条にいわゆる「賃借人に不利なるもの」とはいえない。
借家法第六条にいわゆる「賃借人に不利なるもの」にあたらない事例。
借家法6条
判旨
雇用期間中に限り建物を転貸する旨の合意は、解雇を解除条件とする趣旨であり、当該条件の成就による転貸借の終了は、借地借家法の前身である旧借家法6条の賃借人に不利益な特約には当たらず有効である。
問題の所在(論点)
雇用関係の継続を条件とする建物の転貸借契約において、雇用終了(解雇)を解除条件とする特約は、賃借人に不利益な特約として無効(旧借家法6条)となるか。
規範
建物賃貸借契約において、雇用関係の継続を条件とする合意は、雇用関係の終了を解除条件とする特約(解除条件付法律行為)と解される。このような特約が、賃借人に不利益なものとして無効(旧借家法6条、現行借地借家法30条参照)とされるか否かは、停止条件付法律行為との性質の違いや契約の目的に照らして判断すべきであり、賃借人の意思に基づく解雇等を条件とする場合は無効とはならない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)との間で、上告人が被上告人に雇用されている期間内に限り、家屋を月額3,000円で転貸し、電話及び什器を無償で使用させる旨の契約を締結した。その後、被上告人が上告人を解雇したため、雇用関係が終了したことを理由に家屋の返還等を求めて提訴した。これに対し上告人は、解雇を条件とする賃貸借の終了は賃借人に不利益な特約であり無効であると主張した。
あてはめ
本件契約は、雇用と転借・使用が互いに条件となり不可分な関係に立つものであり、一方が消滅すれば他方も消滅する解除条件付の趣旨である。解雇すべきか否かは債務者(賃貸人兼雇用主)の意思にかかっているが、これは停止条件付法律行為(随意条件)とは異なり、直ちに無効となるものではない。また、転借人(賃借人)のみの意思にかかる解雇を条件とするものであっても、雇用関係に伴う住居提供という性質上、これを賃借人に不利益な特約と解することは相当ではない。
結論
本件転貸借契約は解除条件の成就により終了しており、当該特約は有効である。したがって、解雇により契約の終了を認めた原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
いわゆる社宅や職務提示型の賃貸借において、雇用関係の終了を条件とする明示的な合意がある場合、借地借家法の強行規定に抵触せず有効と判断するための有力な論拠となる。実務上は、解約申入れ(正当事由)の枠組みではなく、解除条件の成就による当然終了として構成する際の指針となる。
事件番号: 昭和35(オ)1149 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
正当事由に基づく家屋受渡請求事件において、被告(賃借人)先代が賃料につき提供も供託もしていないことをもつて、他人の家屋を使用する者として信義に反する旨の主張が原告(賃貸人)によつてなされ、被告が右事実を認めたが、右賃料についてはその後被告はこれを供託した旨陳述し、これに対し原告がその点を争わないと述べているときは、原告…