一 買戻の特約を登記しなかつた場合、不動産買戻権は売主の地位と共にのみ譲渡することができる。 二 買戻の特約を登記しなかつた場合における不動産買戻権の譲渡を買主に対抗するには、これに対する通知またはその承諾を必要とし且つこれをもつて足りる。
一 買戻特約の登記をしなかつた場合における不動産買戻権譲渡の方法 二 買戻特約の登記をしなかつた場合における不動産買戻権譲渡の対抗要件
民法579条,民法581条1項,民法129条,民法467条1項
判旨
不動産の買戻権は契約解除権の性質を有するため、買戻しの特約が登記されていない場合の買戻権譲渡は、売主の地位と共にのみ可能であり、対抗要件として債権譲渡の通知または承諾を要する。
問題の所在(論点)
不動産の買戻しの特約が登記されていない場合において、買戻権の譲渡はどのような態様で行われ、かつ、その対抗要件として何を具備すべきか。
規範
不動産の買戻権は、民法上、契約解除権としての性質を有する。買戻しの特約が登記されている場合は物権に準じて移転登記が対抗要件となるが、特約の登記がない場合には、買戻権は売主としての地位(契約当事者の地位)に伴うものとして譲渡される。したがって、その譲渡を第三者に対抗するには、指名債権譲渡の対抗要件(民法467条)に従い、債務者への通知またはその承諾を必要とする。
重要事実
売主Dと買主(被上告人)の間で不動産の売買がなされ、買戻しの特約が付されたが、当該特約は登記されていなかった。その後、Dは上告人に対し、本件買戻権を譲渡した。原審は、この買戻権の譲渡について対抗要件として移転登記が必要であると判断したほか、売主Dが負担していた抵当権抹消義務の存否を十分に審理しないまま、譲渡の有効性を認めていた。
あてはめ
本件における買戻権は特約の登記がなされていないため、純粋な契約解除権としての性質が前面に出る。この場合、買戻権のみを分離して譲渡することはできず、売主の地位と一体となって譲渡されるべきである。また、対抗要件については、登記による公示がない以上、債権譲渡の通知・承諾の法理によるべきである。原審が「移転登記が必要」とした点は、未登記の買戻権の性質を誤解したものであり、また売主の地位の承継に関わる義務履行の状況を審理しなかった点も不当である。
結論
買戻しの特約が登記されていない買戻権の譲渡を対抗するには、民法467条所定の通知または承諾が必要である。これと異なる判断を示した原判決は破棄される。
実務上の射程
買戻権の法的性質が「解除権」であることを明示した基本判例である。答案上は、登記の有無によって対抗要件が分かれる点(登記あり=移転登記、登記なし=債権譲渡の通知・承諾)を整理して論述する際に用いる。契約上の地位の譲渡の議論と親和性が高い。
事件番号: 昭和31(オ)32 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 破棄差戻
甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡つて合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかつた丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない
事件番号: 昭和28(オ)843 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の登記簿上の所有名義人は、真正の所有者に対し、その所有権の公示に協力すべき義務を有するものであるから、真正の所有者は、所有権に基き所有者名義人に対し、所有権移転登記の請求を為し得るものと解すのが相当である。
事件番号: 昭和31(オ)1084 / 裁判年月日: 昭和33年6月20日 / 結論: 棄却
売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする
事件番号: 昭和33(オ)736 / 裁判年月日: 昭和35年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転登記請求訴訟において、登記原因を贈与から売買や代物弁済に変更することは、所有権に基づく請求という同一の訴訟物に関する主張の変更にすぎず、請求の変更(民訴法143条)には当たらない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件山林の所有権移転登記を求めて提訴した。当初は登記原因を「贈与」と…