一 不在者投票のため公職選挙法施行令第五五条第二項によつて、都道府県選挙管理委員会が病院の一部を指定しても違法ではない。 二 都道府県選挙管理委員会が公職選挙法施行令第五五条第二項によつて病院の一部を指定した場合に、不在者投票管理者が右指定外の病棟の入院者に不在者投票をさせた違法は選挙無効の原因となり得る。
一 不在者投票のため公職選挙法施行令第五五条第二項によつて都道府県選挙管理委員会が病院の一部を指定することの適否 二 都道府県選挙管理委員会が公職選挙法施行令第五五条第二項によつて病院の一部を指定した場合に不在者投票管理者が右指定外の病棟の入院者に不在者投票をさせた違法と選挙の効力
公職選挙法施行令55条2項,公職選挙法205条
判旨
都道府県選挙管理委員会による不在者投票施設の指定(公職選挙法施行令55条2項2号)において、病院の一部のみを指定することは、不在者投票制度の趣旨に適合し、かつ選挙の自由公正を害さない限り、裁量権の範囲内として適法である。
問題の所在(論点)
公職選挙法施行令55条2項2号に基づく不在者投票施設の指定において、病院の一部のみを対象とすることは許されるか。また、その際の選挙管理委員会の裁量の範囲が問題となる。
規範
不在者投票制度は、特定の選挙人に投票の機会と便益を与える特例であると同時に、選挙の自由公正を害さないよう運用されるべきものである。公職選挙法施行令55条2項2号に基づく施設の指定は、同制度の目的に適合するよう都道府県選挙管理委員会の裁量に委ねられている。したがって、病院の一部のみを指定することも、制度の目的に適合し、かつ選挙の自由公正を害さない限り、直ちに違法とはならない。ただし、その指定が行政目的に著しく背反する場合は、裁量権の濫用として違法無効となる。
重要事実
熊本県選挙管理委員会は、ある病院を不在者投票施設として指定する際、病院全体ではなくその一部のみを指定した。これに対し、病院の一部指定は令55条2項2号に違反し、病院全体を指定したものと解すべきである、あるいは指定自体が違法である等の主張がなされた。原審は、当該病院の性格、規模、環境等の諸事情を考慮し、一部指定に裁量権の濫用はないと判断していた。
事件番号: 昭和33(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和34年4月28日 / 結論: 破棄自判
選挙人名簿対照係席が投票立会人席から見透すことができない投票所の施設は、公職選挙法施行令第三五第一項の趣旨に反するけれども、右対照係が行つた選挙人確認手続に違法の点がないときは、右投票所で行われた選挙を無効とすべきではない。
あてはめ
本件における病院の一部指定は、当該病院の性格、規模、環境といった諸事情に照らし、不在者投票制度を認めた法令の目的に適合するものといえる。また、一部指定によって選挙の自由公正が害されたという事実も認められない。したがって、本件指定は裁量権の範囲内であり、公職選挙法49条および同法施行令55条2項2号に違反するものではない。なお、適法な一部指定を無視して行われた不在者投票の手続は、選挙の管理執行に関する規定に違反し、選挙無効の原因となり得る。
結論
病院の一部を指定することも、制度趣旨に適合し自由公正を害さない限り適法である。本件の一部指定は裁量権の範囲内であり有効である。
実務上の射程
行政庁の専門的・技術的な判断が要求される場面における裁量権の広さを認める事案である。答案上は、法令の文言に明文の制限がない場合に、制度の趣旨(目的)から裁量の有無を導き、その行使が目的を逸脱していないかという「裁量権の逸脱・濫用」の枠組みで論じる際に参照すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)1126 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票立会人に候補者の親戚や選挙運動員を選任したとしても、直ちに選挙の公正を著しく害するとはいえない。また、注文外の投票用紙の印刷等の事態があっても、具体的な不正の証拠がなく、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがない限り、選挙を無効とはしない。 第1 事案の概要:上告人は、市町村議会等の選挙において、(…