一民法第七七〇条第一項第四号の離婚原因を主張して離婚の訴を提起したからといつて、反対の事情のないかぎり同条項第五号の離婚原因も主張されているものと解することは許されない。 二妻が精神病にかかつているけれども回復の見込がないと断じ得ないため民法第七七〇条第一項第四号の離婚原因を認め得ない場合に、右精神病治療のため相当長期入院加療を擁するところ夫の財政状態および家庭環境が原判示(原判決理由参照)の如くであるというだけの理由で、同条項第五号の離婚原因の成立を認めることは相当でない。
一離婚原因に関する当事者の主張の解釈。 二民法第七七〇条第一項第五号の離婚原因の成立を認め得ないとされた事例。
民法770条1項4号,民法770条1項5号
判旨
民法770条1項4号の離婚原因を主張したからといって、当然に5号の事由を主張したものとは解されない。精神病が4号の要件を満たさない場合に5号による離婚を認めるには、入院見込期間や経済状況の改善方策等、諸般の事情を詳細に審理すべきである。
問題の所在(論点)
1. 4号の離婚原因の主張に、当然に5号の主張が含まれると解してよいか。2. 4号の要件を満たさない精神病に関し、5号の事由の成否を判断する際の審理の程度。
規範
1. 民法770条1項4号所定の離婚原因を主張して離婚の訴えを提起した者は、反対の事情のない限り、当然に同条項5号所定の事由を主張したものとは解されない。2. 4号の要件(強度の精神病・回復の見込みがないこと)を欠く場合に、5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」の成否を判断するにあたっては、病気による入院見込期間、配偶者の財産状態、家庭環境を改善する方策の有無など、諸般の事情につき詳細な審理を要する。
重要事実
被上告人(夫)が、精神病を患う上告人(妻)に対し、家事育児が望めないとして離婚を求めて提訴した。原審は、妻の精神病に回復の見込みがないとまでは断じ得ず、民法770条1項4号の離婚原因は認められないとした。しかし、長期入院を要することや夫の財政状態・家庭環境を理由に、5号の事由を肯定して離婚を認容したため、妻側が上告した。
あてはめ
1. 被上告人が「相手方の現状では家を守り子を育てることは到底望めない」と陳述していても、この一事をもって直ちに5号の離婚原因を主張した趣旨とは解し難い。2. 回復の見込みがないと断じ得ない精神病につき、単に長期入院を要し、夫の財政や家庭環境が厳しいという理由だけで5号の成立を認めるのは、法令の解釈を誤り審理不尽の違法がある。具体的には、入院の見込期間や、経済・家庭環境の改善方策の有無といった諸般の事情をさらに詳細に審理すべきである。
結論
原判決を破棄し、広島高等裁判所に差し戻す。5号の事由を判断するには、治療の見通しや生活環境の改善可能性等について、より慎重な事実認定が必要である。
実務上の射程
精神病を理由とする離婚請求において、4号(強度の精神病)の要件が厳格であるため、5号(婚姻を継続し難い重大な事由)へのスライドが実務上検討される。本判例は、処分権主義の観点から主張の峻別を求めるとともに、5号適用の際にも単なる経済的困窮等だけでなく、回復可能性や具体的支援策を考慮すべきとする慎重な判断枠組みを示している。
事件番号: 昭和44(オ)977 / 裁判年月日: 昭和45年3月12日 / 結論: 破棄差戻
民法七七〇条二項の規定は、夫婦の一方が同条一項四号に該当する不治の精神病にかかつた事実が肯認される場合においても、離婚請求の許否を決するにあたつては、なお諸般の事情を考慮し、各関係者間において病者の離婚後における療養、生活などについてできるかぎりの具体的方策が講ぜられ、ある程度において、前途に、その方途の見込がついたう…