特別都市計画事業による換地処分がなされた場合、従前の土地の所有者は、事業施行者である県知事に対して、換地上の建物収去および換地引渡を求める私法上の請求権を有しない。
特別都市計画事業による換地処分と事業施行者に対する私法上の請求権
耕地整理法(明治四二年法律第三〇号)17条,土地区画整理法104条
判旨
換地処分は土地所有権の目的物を公権的に変更する観念的な手続に過ぎず、事業施行者が土地の占有を取得して再配分するものではないから、施行者が土地所有者に対し換地を現実に引き渡す義務を負うことはない。
問題の所在(論点)
換地処分によって土地所有権の目的物が変更された場合、事業施行者は土地所有者に対して、換地を現実に引き渡すべき義務を負うか。また、その不履行に基づく損害賠償責任が発生するか。
規範
換地処分(都市計画法、耕地整理法)は、従前の土地と換地を同一のものとみなすことにより、土地所有権の客体を公権的かつ観念的に変更する手続である。事業施行者が一旦土地の占有を取得した上で再配分を行う手続ではないため、特段の事情がない限り、施行者は土地所有者に対して換地を現実に引き渡す義務を負わない。
重要事実
上告人は旧宅地の所有者であり、特別都市計画事業に伴う換地処分により、対象となる換地(所論宅地)の所有権を得た。しかし、当該換地上には他人の建物が存在し、第三者が占有を継続していた。そこで上告人は、事業施行者である被上告人(知事)に対し、換地上の建物収去および土地の現実の引渡しを求め、それが不履行であるとして損害賠償を請求した。
事件番号: 昭和32(オ)863 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借権を譲渡し、譲受人が目的物を占有している場合、賃貸人は民法612条2項に基づき賃貸借契約を解除することができ、その請求が直ちに信義則(民法1条2項)に反するものとはいえない。 第1 事案の概要:上告人A1は、被上告人が所有する土地の賃借権を有していた。A1は、当該土…
あてはめ
換地処分の本質は、従前の土地と換地を法律上同一視する観念的な権利変換手続である。本件において、上告人の所有権は換地処分により適法に換地へと移行しているが、これは施行者が土地の占有を一旦取得し、改めて配分することを意味しない。したがって、換地上に第三者の建物が存在し、上告人が現実の占有を得られていないとしても、それは当該建物の所有者兼占有者に対して直接解決を求めるべき問題である。施行者である被上告人に引渡義務があることを前提とする上告人の主張は、制度の性質に反する独自の主張といえる。
結論
事業施行者は、土地所有者に対して換地を現実に引き渡す義務を負わない。したがって、引渡義務の不履行を理由とする損害賠償請求は認められない。
実務上の射程
土地区画整理事業等における換地処分の対物力的効力の限界を示す。答案上は、換地処分後の物権変動の性質を論じる際や、施行者の法的義務の範囲を特定する際に活用できる。また、土地所有者が占有を確保するには、施行者ではなく現在の不法占有者等を被告として物権的請求権を行使すべきであることを示唆している。
事件番号: 昭和32(オ)911 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人たる地位の承継に関する合意がない場合において、新所有者が賃借人に対して行う土地明渡請求が信義則に反し権利の濫用にあたるとはいえない。 第1 事案の概要:土地の所有者D(訴外)が、本件土地を被上告人(新所有者)に売り渡した。上告人(賃借人)は、Dが賃貸借上の権利義務を被上告人に承継させる意思を…
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
事件番号: 昭和32(オ)808 / 裁判年月日: 昭和32年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条に基づく建物買取請求権が行使された場合、借地権者は建物代金の支払いと引き換えに建物を引き渡す義務を負う。この引渡義務は建物明渡義務とは別個の概念であり、請求権行使の結果として当然に発生する。 第1 事案の概要:上告人(借地権者)は、被上告人(土地所有者)に対し、本件借地上の家屋について…
事件番号: 昭和32(オ)189 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張した損害賠償請求の範囲が特定の費目に限定されている場合、それとは別の損害(賃料相当損害等)を別個の請求として明確に主張した形跡がない限り、裁判所が当該損害について判断しなくても判断遺脱の違法はなく、釈明義務も負わない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、競落した宅地および家屋を転売で…