建物所有の目的で賃借した土地の地上建物が戦災により滅失した後、右土地は特別都市計画法による区画整理区域に指定されたが、換地予定地の指定が遅れ、その間原審認定のような事情があつて(原判決理由参照)、事実上これを家屋所有の目的で使用することに支障を来したとしても、賃借人の使用収益が全面的に不能であつたものとは認められないときは、賃借人は賃料の支払義務を当然に免れたものということはできない。
賃借土地の使用に事実上の支障がある場合と賃料支払義務。
民法536条,民法611条
判旨
賃貸借契約において、目的物の使用収益が一部可能である場合には、借主は賃料支払義務を当然に全額免れるものではない。
問題の所在(論点)
賃借物の使用収益が一部阻害された場合に、賃借人はその期間の賃料支払義務を当然に(全額)免れることができるか。
規範
賃貸借契約における賃料支払義務は、目的物の使用収益に対する対価である。したがって、使用収益が全面的に不能となった場合には、その期間の賃料支払義務は消滅するが、一部でも使用収益が可能である限り、当然に全額の支払義務を免れることはない。
重要事実
上告人は、昭和22年7月から昭和23年6月までの間、本件土地の賃借人であったが、当該期間において土地の使用収益が不能であったと主張し、賃料の支払義務の免除を争った。しかし、原審において確定された事実によれば、当該期間中の上告人による本件土地の使用収益は、全面的に不能であったとは認められなかった。
事件番号: 昭和24(オ)293 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
一 戦時罹災土地物件令第三条は、同条所定の期間、借地権者の土地に対する使用収益を制限すると共に、その地代又は借賃の支払義務を免れしめるに止まり、借地権自体の譲渡を制限禁止する趣旨ではない。 二 一旦相手方の賃借権を承認した者は、賃貸借の対抗要件の欠缺を主張して相手方の賃借権を否定することは許されない。
あてはめ
本件において、上告人による本件土地の使用収益は「全面的に不能であったものとは認められない」。この事実に基づけば、賃貸借の対価関係が完全に断絶したとはいえない。そのため、使用収益が一部可能であった以上、賃料支払義務が「当然に」全て消滅したと解することはできず、上告人は当該期間の賃料支払義務を免れないと評価される。
結論
目的物の使用収益が全面的に不能でない限り、賃借人は賃料支払義務を当然には免れない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、使用不能の程度が全般的か部分的かによって賃料支払義務の有無を区別する。現行民法611条1項(減額請求権から当然減額への改正)の趣旨を先取りするような判断であるが、実務上は「全面的不能」かどうかの認定が重要となる。答案上は、一部滅失・一部使用不能の場合の賃料債務の帰趨を論じる際の前提として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)714 / 裁判年月日: 昭和31年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文に訴訟告知に関する事実の記載がないことのみを理由とする上告は、原判決に影響を及ぼす法令の違背を主張するものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審がその判決文の中に訴訟告知に関する事実を記載していないことを理由として、原判決には違法があると主張し、上告を提起した。 第2 問題の所…
事件番号: 昭和31(オ)190 / 裁判年月日: 昭和32年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の譲受人が、当該不動産に対する賃借権の存在を知って買い受けた場合であっても、当該賃借権が対抗要件を欠いている以上、新所有者が土地の明渡しを求めることは原則として権利の濫用にあたらない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を有していた。被上告人は、上告人が本件土地を占有し賃借権…
事件番号: 昭和33(オ)462 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料値上げの合意が地代家賃統制令に違反して無効である場合、当該合意に基づく不足分の不払を理由とする賃貸借契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)との間で、本件建物の賃料値上げの合意がなされた。賃貸人は、賃借人が昭和25年9月分の賃料につき、値上げ後の不足分…