賃借権に基き土地の引渡を求める給付訴訟が係属しても、その基本たる賃借権の存否内容につき即時確定の利益の認められる限り、賃借権確認の訴は許されるものと解すべきである。
賃借権に基く給付訴訟の係属と賃借権確認の訴の適否
民訴法225条,民訴法231条
判旨
給付判決が確定しても、その既判力は訴訟物たる給付請求権の存否にのみ及び、前提となる法律関係には及ばないため、別途確認の利益が認められる限り確認の訴えを提起できる。
問題の所在(論点)
土地の引渡を命ずる給付判決が確定している場合において、その基本となる賃貸借関係の存在確認を求める訴えにつき、確認の利益(民事訴訟法134条参照)が認められるか。また、前訴給付判決の既判力が前提となる賃貸借関係の存否に及ぶか。
規範
確定判決の既判力は、主文に包含されるもの、すなわち訴訟物として主張された法律関係の存否に関する判断の結論そのものについて及ぶ。その前提となる法律関係(権利の発生原因たる基本関係など)の存否には及ばない。また、現在の紛争を終局的に解決するために即時確定の利益が認められる場合には、確認の訴えが許容される。
重要事実
被上告人は、上告人らに対し賃借権に基づき土地の引渡しを求める別訴を提起し、これを認容する給付判決が確定していた。しかし、上告人らが依然として賃貸借関係の存否や内容を争っていたため、被上告人は別途、本件賃貸借関係の存在確認を求める訴えを提起した。上告人側は、前訴給付判決がある以上、確認の訴えは許されないと主張して争った。
事件番号: 昭和30(オ)859 / 裁判年月日: 昭和31年6月1日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条による借地権の対抗を受ける第三者の中には、当該土地について借地権を取得しその上に登記した建物を所有する者をも含む。
あてはめ
前訴である土地引渡請求訴訟の既判力は、訴訟物である「賃借権に基づく引渡請求権」の存否にのみ及ぶ。その前提となる「賃貸借契約の存在」は理由中の判断にすぎず、既判力は及ばない。本件では、上告人らが現に賃貸借の存否や内容を争っており、給付の訴えのみでは当事者間の紛争を終局的に解決できない状態にある。したがって、法的地位の不安を除去するために即時確定の利益が認められる。
結論
賃借権に基づく土地引渡しの給付判決が確定していても、その基本となる賃貸借関係の存否内容について即時確定の利益が認められる限り、確認の訴えは適法である。
実務上の射程
既判力の客観的範囲(民訴法114条1項)が「主文に包含するもの」に限られることを示す典型判例。給付の訴えが可能な場合に確認の訴えを提起する「確認の利益の補充性」の例外場面(給付判決では紛争が根本的に解決しない場合)として答案で活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)28 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人の地位を承継した者が、合意解約の成立していない賃貸借物件の賃借権の存在を否認している場合には、賃借人は賃貸人に対し賃借権の確認を求める利益を有する。また、賃貸人の買受の意図がどうあれ、適法に存続する賃借権を主張することは権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は本件宅…
事件番号: 昭和34(オ)325 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理に伴う仮換地の指定により、従前の土地が使用収益できなくなった場合であっても、土地区画整理施行者への申告等を通じて仮換地を使用収益し得る地位にある以上、賃借権存在の確認を求める訴えの利益が認められる。 第1 事案の概要:賃貸借契約の当事者間で、当該契約の存否が争われた事案である。対象土地…
事件番号: 昭和31(オ)190 / 裁判年月日: 昭和32年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の譲受人が、当該不動産に対する賃借権の存在を知って買い受けた場合であっても、当該賃借権が対抗要件を欠いている以上、新所有者が土地の明渡しを求めることは原則として権利の濫用にあたらない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を有していた。被上告人は、上告人が本件土地を占有し賃借権…
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…