国が当事者となり売買等の契約を競争入札の方法によつて締結する場合に、落札者があつたときは、国および落札者は、互に相手方に対し契約を結ぶ義務を負うにいたるが、この段階では予約が成立するにとどまり、本契約は、契約書の作成によりはじめて成立すると解すべきである。
国が当事者となり、売買等の契約を競争入札の方法によつて締結する場合における契約の成立時期。
民法555条,民法521条,民法526条,会計法29条,予算決算及び会計令68条,予算決算及び会計令83条
判旨
国が当事者となる競争入札において、落札の段階では予約が成立したにとどまり、本契約は契約書の作成により成立する。制限行為能力者が詐術を用いた場合、契約成立前であれば民法21条(旧20条)により取消権が排除される。
問題の所在(論点)
1. 国を当事者とする競争入札において、本契約が成立する時期はいつか。 2. 制限行為能力者の詐術による取消権の排除(民法21条)が認められるためには、詐術はどの時点で用いられる必要があるか。
規範
1. 国が当事者となる競争入札において、落札により国及び落札者は互いに契約締結義務を負うが、この段階では予約が成立したにとどまる。本契約は契約書の作成によりはじめて成立し、予約はこれに吸収される。 2. 民法21条(旧20条)の趣旨は、相手方の誤信及び信頼を保護し取引の安全を図る点にある。そのため、契約締結に際して詐術が用いられた場合には取消権が排除されるが、契約成立後に詐術が用いられた場合には同条の適用はなく、原則通り取り消すことができる。
重要事実
国が競争入札を行い、制限行為能力者であるDが落札した。Dは落札後、本契約の成立とみなされる「契約書の作成」を行うまでの間に、自身を能力者と誤信させるための詐術を用いた。その後、契約書が作成され本契約が成立したが、D側(上告人)は制限行為能力を理由として当該売買契約の取り消しを主張した。
事件番号: 昭和30(オ)883 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
一 証人尋問の申出をした当事者が費用を予納しなかつた場合に、相手方が予納したときは、裁判所は右証人尋問の手続を採り得る。 二 証人尋問の申出は、その尋問が終了した後は撤回することを得ない。
あてはめ
1. 本件では落札後、契約書が作成された時点で売買の本契約が成立したと解される。 2. Dが用いた詐術は、落札後かつ契約書作成前、すなわち「本契約の成立前」に行われている。民法21条は相手方の信頼を保護する規定であり、契約締結に向けた過程で詐術が用いられた以上、同条の適用場面に該当する。 3. 本契約成立前に詐術が用いられた結果、相手方はDを能力者と誤信して本契約を締結するに至ったといえるため、D側は取消権を正当に行使することができない。
結論
競争入札における売買契約は契約書作成時に成立する。本件では本契約成立前に詐術が用いられているため、民法21条により取消権が排除され、D側は契約を取り消すことができない。
実務上の射程
行政主体の契約締結過程における「落札」と「契約書作成」の法的性質を区別した基本判例である。答案上は、制限行為能力者の詐術の基準時を「契約成立時」と特定する際の根拠として利用する。また、予約と本契約の関係(吸収関係)を論じる際にも参照しうる。
事件番号: 昭和31(オ)918 / 裁判年月日: 昭和33年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】種類債権または制限種類債権において、契約締結当時に特定の場所等に目的物の在庫が存在しなかったとしても、その後に債務者が目的物を入手することが可能であれば、引渡義務は履行不能とはならない。 第1 事案の概要:上告人らは、大豆原油の売買契約に基づく引渡債権について、本件売買契約の当時、目的物を保管すべ…