一 公職選挙法二五一条の三の規定は、憲法前文、一条、一五条、二一条、三一条に違反しない。 二 会社の代表取締役乙が、公職の候補者甲を当選させる目的の選挙運動を会社を挙げて行おうと企図し、従業員の朝礼及び下請業者との会食において甲にあいさつをさせ、投票及び投票の取りまとめを依頼するなどの選挙運動をする計画を会社の幹部らに表明した上、これを了承した右幹部らのうち丙及び丁に各人の役割等の概括的な指示をし、丙及び丁は、他の幹部や関係従業員に指示するなどして、朝礼及び会食の手配と設営、後援者名簿用紙の配布等の個々の選挙運動を実行させ、要請に応じた甲の出席した朝礼及び会食の席上、乙が会社として甲を応援する趣旨のあいさつをし、甲自らも同社の従業員又は下請業者らの応援を求める旨のあいさつをしたなど判示の事実関係の下においては、乙、丙及び丁は、公職選挙法二五一条の三第一項に規定する組織的選挙運動管理者等に当たる。
一 公職選挙法二五一条の三と憲法前文、一条、一五条、二一条、三一条 二 公職の候補者を当選させる目的で会社の指揮命令系統を利用して選挙運動を行った右会社の代表取締役等が公職選挙法二五一条の三第一項に規定する組織的選挙運動管理者等に当たるとされた事例
公職選挙法251条の3,憲法前文,憲法1条,憲法15条,憲法21条,憲法31条
判旨
公職選挙法の組織的選挙運動管理者等に係る連座制(251条の3)は、選挙の公明・適正を確保する目的において合理的であり、憲法の定める参政権や適正手続等に違反しない。また、同条の「組織」や「意思を通じ」の意義は、特定の継続性や詳細な認識を要せず、広範に肯定される。
問題の所在(論点)
公職選挙法251条の3第1項に定める組織的選挙運動管理者等に係る連座制規定の合憲性、および同項にいう「組織」や「意思を通じ」の意義。
規範
1. 組織的選挙運動管理者等の連座制は、候補者に選挙浄化義務を課し、選挙犯罪の防止を怠った場合に制裁を科すことで選挙の公明・適正を回復する点に合理的な目的がある。手段も免責規定等の限定があり必要かつ合理的で、憲法前文、1条、15条、21条、31条に違反しない。 2. 「組織」とは、必ずしも規模が大きく一定の継続性を有するものに限られない。 3. 「意思を通じ」とは、組織の具体的構成や指揮命令系統、運動の具体的内容まで詳細に認識・了解することまでは要しない。
事件番号: 平成9(行ツ)31 / 裁判年月日: 平成9年7月15日 / 結論: 棄却
公職選挙法二五一条の三の規定は、憲法一三条、一四条、一五条一項三一条、三二条、四三条一項九三条二項に違反しない。
重要事実
上告人の当選を図るため、会社の代表取締役Eが主導し、複数の幹部(部長、次長等)が了承した上で、従業員や下請業者を動員した選挙運動を計画・実行した。具体的には、朝礼や慰労会での挨拶、後援者名簿の配布、ポスター回収等を組織的に行い、上告人もこれらの場に出席して応援を求める挨拶をしていた。Eは計画の立案・調整を、幹部F・Gは指揮・監督を担っていた。
あてはめ
本件では、Eを総括者とする幹部ら及び従業員が役割を分担し、会社の指揮命令系統を利用して協力し合っており、法251条の3第1項の「組織」による運動にあたる。Eが立案・調整、Fらが指揮・監督を行っていたことは明らかであり、これらは「組織的選挙運動管理者等」に該当する。上告人は、Eとの間で選挙運動が組織により行われることを黙示にでも了解していた以上、組織の総括者的立場にあった者と「意思を通じた」ものと認められる。したがって、上告人側の主張するような限定的解釈(大規模・継続的な組織、詳細な認識の必要性)は採用できない。
結論
本件連座制規定は合憲である。また、本件の事実関係は同規定の要件を充足するため、上告人の当選無効及び立候補禁止を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
連座制の合憲性を前提とした上で、「組織」や「意思を通じ」の要件を緩やかに解釈する。会社ぐるみや複数の支持者による役割分担がある場合、候補者がその概括的な状況を認識・了解していれば、具体的指示をしていなくとも連座の対象となる。答案上は、組織の規模や継続性の欠如、詳細な認識の欠如を理由とする免責主張を排斥する際に有用である。
事件番号: 平成10(行ツ)215 / 裁判年月日: 平成10年11月17日 / 結論: 棄却
公職選挙法二五一条の二第一項五号、二項の規定は、憲法一五条一項、三一条に違反しない。
事件番号: 平成8(行ツ)117 / 裁判年月日: 平成8年7月18日 / 結論: 棄却
選挙運動の総括主宰者、出納責任者等が選挙犯罪により刑に処せられたときは公職の候補者等であった者が公職選挙法二五一条の五に規定する時から五年間当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙に立候補することを禁止する旨の同法二五一条の二第一項の規定は、憲法一五条、三一条、九…