一 本件犯罪と累犯の関係にある前科が数個あつても、前科相互間に刑法第五六条所定の条件を欠くときは、再犯であつて三犯ではない。 二 前科相互間に刑法第五六条所定の条件を欠くため、再犯であつて三犯でないにも拘らず、刑法第五九条を適用した違法があつても、その前科がいずれも本件犯罪と累犯の関係にある場合には、右の違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかな場合にあたらない。
一 数個の前科がある場合と刑法第五九条にいわゆる「三犯」 二 再犯につき刑法第五九条を適用した違法と判決への影響
刑法56条,刑法57条,刑法59条,刑訴法380条
判旨
複数の前科がある場合に前科相互間で累犯の要件を欠き、三犯以上の累犯(刑法59条)が成立しないにもかかわらず、誤って同条を適用したとしても、再犯(56条)としての加重がなされる以上、処断刑の範囲に差異は生じないため、特段の事情がない限り「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反」には当たらない。
問題の所在(論点)
刑法59条所定の三犯以上の累犯の要件を欠く事案において、誤って同条を適用した場合、それが判決に影響を及ぼすべき法令の違反(刑事訴訟法上の控訴・上告理由)となるか。
規範
刑法59条(三犯以上の累犯)の適用に誤りがある場合であっても、被告人に複数の前科があり、それらが本件犯罪との関係で再犯(56条)の要件を満たすのであれば、59条適用の有無により処断刑の範囲は変化しない。したがって、量刑上当然考慮されるべき前科の存在が認められる限り、当該適用誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反には当たらない。
重要事実
被告人には複数の前科があり、第一審判決はこれらが本件犯罪と累犯の関係にあると認定して刑法59条を適用した。しかし、実際にはこれら前科相互の間に累犯の成立条件が欠けていたため、本件は三犯(59条)ではなく、再犯(56条)として処理すべき事案であった。被告人側は、三犯以上の累犯ではないのに59条を適用したことは法令の違反であり、判決に影響を及ぼすと主張して上訴した。
あてはめ
本件における各前科は、本件犯罪に対してそれぞれ累犯の関係にあることは事実であり、再犯としての加重は免れない。刑法59条を適用した場合と56条のみを適用した場合を比較すると、いずれも処断刑(懲役刑の長期を2倍にする等)の範囲に差異は生じない。また、認定された各前科は処断刑の範囲内において量刑上当然に考慮されるべき事実である。したがって、59条を適用した点に形式的な誤りはあるものの、実質的な科刑の妥当性に影響を及ぼすものではないと評価される。
結論
刑法59条の適用を誤ったとしても、処断刑の範囲に変更がなく、前科が量刑上考慮されるべきものである以上、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反には当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
累犯加重の条文選択の誤りに関する判例である。実務上、処断刑の枠組みが変わらない形式的な適用誤りについては、直ちに破棄理由とはならないことを示している。ただし、累犯に該当する前科が一つしかないのに二つ以上あると誤認した場合には、処断刑自体に影響し得るため、本判決の射程外となる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和28(あ)4719 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】累犯加重を規定する刑法の各条項は、憲法14条が定める法の下の平等に違反しない。過去の犯罪前科を理由に刑を重くすることは、合理的な根拠に基づく差別として容認される。 第1 事案の概要:被告人は前科を有していたところ、刑事裁判において刑法56条以下の累犯加重規定が適用された。これに対し、被告人側は、一…