家庭裁判所が少年につき刑事処分相当として検察官に事件を送致した後これと併合して審理できるような余罪が捜査機関に発覚したときにも、さらにその事実について家庭裁判所を経由しなければ起訴することはできない。
少年に関するいわゆる余罪を起訴するについては家庭裁判所を経由しなければならないか
少年法20条,少年法45条,刑訴法338条4号
判旨
少年事件の起訴には、原則としてすべて事前に家庭裁判所の審査を経る必要があり、検察官送致決定の効力は送致事実に含まれない別個の犯罪事実(余罪)には及ばない。
問題の所在(論点)
家庭裁判所の検察官送致決定(少年法20条)の効力が、送致決定の理由に摘示されていない別個の犯罪事実(余罪)にまで及ぶか。すなわち、家庭裁判所の審理を経ていない余罪について、検察官が直接公訴を提起できるか。
規範
現行少年法は、少年保護の周到を期するため、全事件を一たん家庭裁判所に集中させる全件送致主義(同法42条)を採用している。具体的な特定の犯罪事実を起訴するには、すべて一度保護を目的とする機関である家庭裁判所の門をくぐらせ、その審査を経るという手続を必要とする。
重要事実
検察官は、家庭裁判所から検察官送致(逆送)を受けた少年事件について公訴を提起する際、送致決定の対象となった事実と併合して審理され得る関係にある余罪(送致後に発見された事実)についても、あわせて起訴した。検察側は、逆送決定は少年の「人格」に対する刑事処分の相当性を判断したものであるから、その効力は余罪にも及ぶと主張した。
あてはめ
少年法20条、42条、45条5号の規定を照合すると、検察官は逆送された具体的な特定の罪についてのみ起訴権限を有する。所論は余罪を「強い犯罪性の徴表」として送致決定の効力が及ぶとするが、これは特定の事件ごとに家庭裁判所の審査を経由させるという少年法の趣旨に反する。したがって、家庭裁判所の審査を経ていない事実については、別途送致手続を経ない限り、起訴することはできない。
結論
送致決定の効力は余罪に及ばない。家庭裁判所の審査を経ていない事実についてなされた公訴提起は、少年法の基本原則に反し無効である。
実務上の射程
全件送致主義の徹底を強調した重要判例である。答案上は、少年事件において家裁送致(42条)や逆送(20条)の手続的瑕疵が問題となる場面で、その手続が「家裁の門をくぐらせる」という不可欠な審査プロセスであることを示す論拠として用いる。
事件番号: 昭和29(あ)1708 / 裁判年月日: 昭和29年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法20条に基づく検察官送致の決定をした裁判官が、その後の刑事訴訟において審判に関与することは、刑事訴訟法20条7号にいう「前審の裁判」に関与した場合には当たらない。 第1 事案の概要:少年であった被告人Aについて、家庭裁判所の裁判官が少年法20条に基づき検察官送致(逆送)の決定を行った。その後…
事件番号: 昭和37(あ)3074 / 裁判年月日: 昭和38年4月12日 / 結論: 棄却
少年法第二〇条による検察官送致の決定をした裁判官が後にその刑事事件の審判に関与しても裁判官除斥の原因とならない(当裁判所昭和二七年(あ)第五四七四号同二九年二月二六日第二小法廷決定、刑集八巻二号一九八頁参照)。
事件番号: 平成17(し)346 / 裁判年月日: 平成17年8月23日 / 結論: 棄却
少年法20条による検察官送致決定に対しては,特別抗告をすることはできない。