刑法第九六条ノ二にいう「強制執行」には、国税徴収法に基く滞納処分たる差押を含まない。
刑法第九六条ノ二の「強制執行」と国税徴収法に基く滞納処分たる差押
刑法96条ノ2,国税徴収法(昭和25年3月法律第69号による改正前のもの)32条,国税徴収法(右改正後のもの)32条
判旨
刑法96条の2(現96条の2第1号)にいう「強制執行」とは、民事訴訟法による強制執行またはこれを準用する執行を指し、国税徴収法に基づく滞納処分は含まれない。
問題の所在(論点)
刑法96条の2(当時)にいう「強制執行」の意義に、国税徴収法に基づく「滞納処分」が含まれるか。
規範
刑法96条の2にいう「強制執行」とは、民事訴訟法(現民事執行法)上の強制執行または同法を準用する強制執行を指称する。他方、国税徴収法に基づく滞納処分たる差押えは、これに含まれないと解すべきである。
重要事実
被告人が国税滞納に基づく滞納処分(差押え)を妨害する行為に及んだため、刑法96条の2(強制執行免脱罪)を適用して処断された事案。弁護人は、滞納処分は同条の「強制執行」に含まれず、国税徴収法32条(当時の規定)を適用すべきであると主張して上告した。
あてはめ
1. 刑法96条の2は、裁判所の判決による執行を確保し司法裁判の効力を確保するために制定されたものであり、主として民事訴訟法による執行妨害の排除を目的とする。2. 国税徴収法は滞納処分を妨げる行為につき独自に罰則を設けており、刑法改正時にこれを取り込む必要はなかった。3. 滞納処分は同法に詳細な規定があり民事訴訟法を準用しない。4. したがって、滞納処分は「強制執行」に含まれず、国税徴収法(旧法)32条を適用すべきであるが、両者の法定刑に軽重がない以上、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまではいえない。
結論
刑法96条の2の「強制執行」に滞納処分は含まれない。本件では法令適用の誤りがあるが、結論において正義に反しないため上告棄却。
実務上の射程
強制執行免脱罪の客体となる「強制執行」の範囲を限定した重要判例である。公租公課の滞納処分に対する妨害については、刑法の強制執行免脱罪ではなく、国税徴収法の罰則規定が適用されることを明示している。答案上は、罪刑法定主義の観点から「強制執行」の文言を厳格に解釈する際の根拠として活用できる。
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刑法第九六条ノ二の犯罪の成立には、仮差押、仮処分その他の強制執行を免れる目的あるをもつて足り、その失効の全部または一部の行われたことを要するものでない。