一 自給塩を決定の除外事由なしに販売する場合の統制額は、塩専売法にもとずく賠償価格ではなく、塩売捌規則に定める販売価格である。 二 原判決が右統制額として賠償価格を挙示していても、それが右販売価格を超えるものであるときは、その擬律の誤は未だ刑訴第四一一条にあたらない。
一 自給塩を決定の除外事由なしに販売する場合の統制額 二 刑訴第四一一条に該当しない一事例
物価統制令3条,物価統制令7条,物価統制令33条,物価統制令施行規則8条,旧塩専売法15条,旧塩専売法20条,塩売捌規則11条,刑訴法411条
判旨
自給塩を法定の除外事由なく統制額を超えて売買等した場合の統制額は、製造者が直接譲渡するか転売するかを問わず、塩専売法及び塩売捌規則の定める販売価格である。ただし、原判決がより低額な賠償価格を統制額とした違法があっても、それが被告人に有利な誤りであれば、破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
問題の所在(論点)
自給塩を法定の除外事由なく売買した場合の価格統制の基準となる「統制額」はいかなる価格か。また、原判決が誤った基準を適用したがそれが被告人に有利な結果をもたらしている場合、刑訴法411条による職権破棄を要するか。
規範
自給塩を法定の除外例なく売買等する場合における価格統制の基準(統制額)は、製造者による直接の譲渡か転売かを問わず、塩専売法及び塩売捌規則の定める販売価格である。もっとも、確定した統制額よりも低額な基準を適用した法令適用の誤り(擬律錯誤)があったとしても、それが被告人にとって有利な計算に基づくものである場合には、刑訴法411条の「判決を破棄しなければ著しく正義に反する」事由には当たらない。
重要事実
被告人らは、自給塩について法定の除外事由がないにもかかわらず、物価庁・大蔵省告示等に基づく高松地方専売局長公示等の定める「製塩の賠償価格」を超えた代金で販売、買受け、または販売の周旋を行った。原判決は、この「賠償価格」を価格統制の基準(統制額)として有罪を宣告したが、本来適用すべき統制額は塩売捌規則等の定める「販売価格」であった。被告人らは上告したが、原判決の基準は本来の基準より被告人に有利なものであった。
あてはめ
本件における自給塩売買の統制額は、塩専売法等の定める「販売価格」によるべきである。原判決が「賠償価格」を基準とした点は擬律錯誤の違法がある。しかし、原判決が採用した「賠償価格」による統制額は、本来適用すべき「販売価格」による統制額よりも低額であり、被告人にとっては有利な基準で罪責が問われている。このような被告人に有利な方向での法令適用の誤りは、被告人の不利益を救済することを主眼とする上告審において、判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとはいえない。
結論
被告人らの上告を棄却する。原判決には統制額の認定について違法があるが、被告人に有利な誤りであるため、原判決を破棄するには及ばない。
実務上の射程
統制額の認定基準という実定法上の解釈を示すとともに、刑訴法411条の「著しく正義に反すると認めるとき」の判断基準として、法令適用の誤りが被告人に有利に作用している場合には原則として破棄事由にならないという、救済の必要性に着目した実務上の運用を認めたものである。
事件番号: 昭和26(れ)1893 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
論旨第一点の所論例外許可価格は、特殊の事情に基く需給を充すため、特定の者に対し販売数量、販売先、時期等を限定して特に許可されたものであつて、本件のような所謂闇取引につき一般業者に対し認められたものではない。それゆえ、原判決は所論のように法令の適用を誤つたものではない。