一 委任命令は、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」の規定により失効しない。 二 証拠決定をしないまま弁論を終結したにすぎないだけの場合は、証拠決定をしないで弁論を終結するのは絶対的上告理由にあたるとした当裁判所の判例と相反する判断をしたことにならない。 三 証拠決定をしないままで弁論を終結した違法があつても、申請された証人が単に被告人の性格を証明するためのものにすぎないときは、刑訴411条1号にいわゆる判決に影響を及ぼす違法があるとはいえない。 四 証拠調をしない証拠を証拠としたところでそれが他の適法な証拠の証明力を強めるためのものにすぎないものであるときは、刑訴第四一一条第一号にいわゆる判決に影響を及ぼす違法があるということはできない。
一 委任命令は「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」の規定により失効するか 二 判例と相反する判断をしたことにならない一事例 三 証拠決定をしないままで結審した違法が判決に影響を及ぼさない一事例 四 証拠調をしない証拠を証拠とした違法が判決に影響を及ぼさない一事例
日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律1条,日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律1条の3,刑訴法405条2号,刑訴法411条1号,旧刑訴法344条,旧刑訴法410条14号,旧刑訴法340条,旧刑訴法336条
判旨
憲法37条2項は当事者が申請する証人をすべて調べなければならない趣旨ではなく、裁判所が不必要と認める証人の取調べを省略しても憲法違反とはならない。また、共同審理を受けていない共犯者の自白は独立の証拠能力を有し、これを証拠とすることは憲法38条3項に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 裁判所が被告人の申請した証人を採用せずに審理を終結させることは、憲法37条2項の証人喚問権に違反するか。2. 共犯者の供述を証拠として有罪判決を導くことは、憲法38条3項の自白のみによる有罪の禁止に抵触するか。
規範
1. 憲法37条2項(証人喚問権)は、被告人に有利な証人を強制的に喚問する権利を保障するが、裁判所に対し、当事者が申請する証人を無差別にすべて調べなければならない義務を課すものではない。2. 憲法38条3項(自白の補強証拠)に関し、共同審理を受けていない共犯者の自白は、被告人本人にとっては「本人の自白」に当たらない独立の証拠能力を有する証拠であり、これを唯一の証拠として有罪としない限り同条項に抵触しない。
事件番号: 昭和26(れ)1121 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が単独で犯罪を実行したとの認定に対し、共犯者の存在を示唆する主張がなされた場合であっても、それが単なる事実誤認の主張にとどまる限り、上告理由には当たらない。最高裁判所は、記録を精査した上で刑訴法411条を適用すべき著しい正義に反する事由がない限り、原判決を維持すべきである。 第1 事案の概要…
重要事実
被告人は外国為替管理法違反等の罪に問われた。原審(控訴審)において、弁護人は被告人の性格に関する証人等の取調べを申請したが、裁判所はこれについて採否の決定を行わないまま弁論を終結した。また、原審は共犯者の自白(「被告人の鞄から納品書が出てきた」旨の供述等)を主要な証拠として有罪判決を言い渡した。これに対し被告人側が、証人採用の不作為による証人喚問権の侵害、および共犯者の自白による有罪判決の違憲性を主張して上告した事案である。
あてはめ
1. 証人喚問権について:本件で申請された証人はいずれも被告人の性格に関するものに過ぎず、事件の真実発見において不可欠なものとは認められない。裁判所が必要でないと判断した証人を調べないまま弁論を終結させることは、証人喚問権の趣旨に反せず、手続上の違法はない。2. 共犯者の自白について:原審は共犯者の供述のみならず「鞄から納品書が出てきた」といった物的な事実に関する供述も証拠としており、被告人本人の自白のみで有罪としたわけではない。さらに、共同審理を受けていない共犯者の供述は被告人本人にとっては独立した証拠であり、これに基づき事実認定を行うことは合憲である。
結論
1. 裁判所が不要な証人の取調べを省略しても憲法37条2項には違反しない。2. 共犯者の供述を証拠として採用することは憲法38条3項に違反しない。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟における証拠採用の合理的な裁量を認める判例として重要である。実務上、証人採用の必要性は裁判所の合理的な裁量に委ねられ、訴訟遅延を防ぐ観点からの制限が許容される。また、共犯者の供述の証拠能力および補強証拠としての性格を論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和27(あ)1200 / 裁判年月日: 昭和28年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証人申請を必要がないものと認めて却下することは、憲法37条2項に反しない。自白の任意性を既に調査し、任意になされたものと認めた場合には、証人尋問の必要性を否定することができる。 第1 事案の概要:被告人の自白を内容とする複数の供述調書について、第一審裁判所はその任意性を調査し、任意になされ…
事件番号: 昭和24(れ)288 / 裁判年月日: 昭和25年7月19日 / 結論: 棄却
原判決が憲法第三一條に違反すると主張するけれどもその内容が原判決のした刑法乃至刑罰法規の解釋適用を誤つていると主張するか、又は、原判決の前提となつた第二審判決の事實認定證據判斷を非難するに歸し實質においては憲法違反を理由とするものでないときは刑訴應急措置法第一七條に規定する再上告適法の理由とならない。